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「かぼちゃの馬車」事件とは
シェアハウスやサブリースについて調べていると、「かぼちゃの馬車」という言葉をよく見かけます。「かぼちゃの馬車」事件は、多くの不動産投資家が追い詰められてしまった一例です。
今回は、「かぼちゃの馬車」事件とは、一体どのような事件だったのか。また、不動産投資において、どのようなことに気を付ければ良いのかをお伝えします。今後、不動産投資をお考えのオーナー様には、是非、教訓としてご一読いただきたいと思います。
「かぼちゃの馬車」とは、どんな物件だったのか
かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズ(以下、スマートデイズと記載)が都内を中心に運営していた女性専用シェアハウスのブランド名で、「トランクひとつで即入居」を売りにしていました。
家賃は、管理費込みで4万円程度に設定されていました。これには、インターネットの通信料や光熱費も含まれており、さらには、敷金・礼金・仲介手数料もなしとしていました。
居室には、ベッドや冷蔵庫などの設備が備わっていました。しかし、ほとんどの居室の広さはわずか5畳にも満たず、シェアハウスの特徴でもある共用部もくつろげるものではありませんでした。家賃4万円を1㎡に換算すると、ワンルーム賃貸よりも割高でした。
「かぼちゃの馬車」のビジネス
スマートデイズは、「副収入を得たい」と考えている会社員(不動産投資家)をターゲットに、シェアハウス「かぼちゃの馬車」の建築の話を持ち掛けました。
「オーナーになりたい」という不動産投資家を見つけると、スマートデイズがシェアハウスを建設し、不動産投資家に販売します。「かぼちゃの馬車」を1棟建設するには、1億円以上が必要であったため、多くの不動産投資家は銀行でローンを組んで投資していました。そして、スマートデイズと不動産投資家はサブリース契約を結びます。
■ サブリース契約の内容と構図
〇 スマートデイズが不動産投資家から、「かぼちゃの馬車」を借り上げる。
〇 スマートデイズが、入居者の募集をし、入居者からの集金、「かぼちゃの馬車」管理運営を行う。
〇 スマートデイズが、入居者からの賃料から手数料を引いて、不動産投資家にサブリース賃料を支払う。
〇 不動産投資家は、サブリース賃料の中から、ローンの返済をしていく。
サブリース契約の特徴は、一般的な賃貸経営に比べて家賃収入が低くなる可能性はあるものの、空室によって家賃収入が減るというリスクがなくなることです。また、オーナーにとっては、賃料の一部を管理会社に渡す代わりに、入居者募集や賃貸管理などの手間が掛からないことも特徴です。
スマートデイズは、「頭金なしで投資できる」「30年間の家賃収入を保証」「利回り8%」などを謳い文句にしていました。その結果、2012年8月に設立されたスマートデイズは、都内で約800棟のシェアハウスを管理することとなり、2017年3月期には年売り上げ316億円にまで上りました。
「かぼちゃの馬車」の破綻
そんな中、不動産投資家たちのもとへ「サブリース賃料支払い変更のお知らせ」と書かれた通知書が届きます。そこには、スマートデイズから不動産投資家に払われるサブリース賃料の減額の記載がありました。
2018年1月には、サブリース賃料の支払いがいよいよ滞るようになりました。サブリース賃料の収入がなくなって、ローンの返済ができなくなった不動産投資家は、自己破産に追い込まれる事態となったのです。
2018年4月。スマートデイズは、東京地裁に民事再生法の適用を申請しましたが棄却され、破産手続きに移行しました。スマートデイズの負債額は、債権者約911人に対し約60億3500万円。この内、不動産投資家のオーナーは約675人、その負債額は約23億円でした。
2019年2月には、都内で第1回債権者集会開かれました。この際に、破産管財人が算出した債権は結局1,053億円にのぼることが明らかとなりました。
破綻の背景1~建築会社によるキックバック~
そもそも「キックバック」とは、簡単に言うと、取引先への謝礼金です。実際のビジネスシーンでも行われており、キックバックそのものに違法性はありません。ただし、キックバックを行う会社間で合意が取れていない場合や、相手方が損失を被るようなキックバックを受け取っている場合には、罪に問われる可能性があります。また、キックバックの額が高くなると、企業のコンプライアンスとしては危ういものになります。
スマートデイズも「かぼちゃの馬車」を建てる建築会社に建築費を支払ったあと、その建築費の一部をコンサルティング費用などの名目で、建築会社からキックバックを受け取っていました。
一般的なキックバックの相場はせいぜい建築費の2、3%です。しかし、スマートデイズは建築費の50%ものキックバックを建築会社に求めていました。建築会社は、建築費を値上げするしかありません。その結果、「かぼちゃの馬車」の建築費は高額になってしまっていたのです。最終的に建築費を請求される不動産投資家たちは、高額なローンを組む必要がありました。
例えば、建築費が5,000万円の場合、一般的なキックバックは100~150万円です。しかし、スマートデイズの設定した50%の場合、建設会社はスマートデーズに2,500万円も支払わなくてはならず、残った2,500万円では建設会社は仕事になりません。
そこで、そもそもの建築費を倍の1億円に設定することにします。すると、半額の5,000万円をキックバックでスマートデイズに支払っても、建設会社の手元には5,000万円が残ります。そして、オーナーとなる不動産投資家に建築費1億円が請求されるのです。
スマートデイズは、賃料ではなく、この50%のキックバックを原資に、家賃を保証することで「かぼちゃの馬車」ビジネスとしていたのです。シェアハウスを建てるほど、キックバックで利益が出るため、次々に「かぼちゃの馬車」の建築を進めていたのです。
破綻の背景2~スルガ銀行がずさんなローン審査、スマートデイズに協力~
こうして「かぼちゃの馬車」は、内容の割に高額な物件となってしまいます。それなのに、不動産投資家たちは簡単に融資を受けることができましたた。それは一体、なぜなのでしょうか。
それは、「スマートデイズとスルガ銀行が結託し、協力していたから」なのです。先ほど説明したキックバックの仕組みによって、「かぼちゃの馬車」の建築費が高額になると、その背景で、銀行も融資額が増えるため儲けを得ることができるのです。
そもそも不動産投資を行うには、物件の金額の約1割の頭金が必要となり、物件購入にかかる登記費用等の諸経費は自己資金で調達するのが原則です。しかし、スマートデイズとスルガ銀行はこの原則を守りませんでした。
不動産投資家には「『かぼちゃの馬車』は頭金不要で購入できる」と説明し、スマートデイズは、不動産投資家のローン審査が通りやすくなるよう、不動産投資家の貯蓄や所得などの資産状況に関するプロフィールシートを書き換えていたのです。これを提出されるスルガ銀行は、こういった書き換えを黙認してローンを組んでいました。
さらに、スルガ銀行は不動産投資家向けに「かぼちゃの馬車」のセミナーを実施しました。そして、3.5~4.5%の高金利かつ頭金なしでの融資を組ませ、「かぼちゃの馬車」事業を支えていました。投資経験が少ない個人の投資家たちは、甘い話に目がくらみ、搾取されることとなったのです。
こうして、高額なローンも組めてしまった不動産投資家たちですが、来る2018年1月には、ローン返済の当てとしていたスマートデイズからの家賃収入が滞り、自己破産に追い込まれる人もいました。
その後の不動産投資家たち
2019年9月。被害弁護団が結成され、東京地裁に対し、スルガ銀行に解決を求める調停を申し立てました。不動産投資家たちは「スルガ銀行もスマートデイズに『協力』していたのだから、自分たちに返済をするのはおかしい」と考えたのです。
2020年3月、スルガ銀行と被害弁護団は、「不動産投資家が『かぼちゃの馬車』の土地と建物を手放せば、ローンを帳消しにする」といった内容で合意しました。結果、スルガ銀行が負担する賠償金の総額は440億円となり、不動産投資家257名の負債が解消されました。この解決策は「令和の徳政令」とまで呼ばれました。
2022年3月には、スルガ銀行は「令和の徳政令」に則って、新たに不動産投資家404人分・605億円の債権を新たに第三者に売却したと発表しました。加えて、4月以降にも同様の一括売却を予定しており、ローンの帳消しを求めた不動産投資家への対応は、2022年上半期中にも完了する見込みとしています。累計して、不動産投資家947人・1,490億円の借り入れがゼロとなることになります。
「かぼちゃの馬車」事件から学ぶ、不動産投資の教訓
■ 不動産投資について学び、判断する能力を養う
知識がないと、正しい判断はできません。「なぜ、投資家が有利な条件で契約できるのか」「この契約で、会社には何のメリットがあるのか」を考え、判断する必要があります。投資にリスクはつきものです。とはいえ、知識をつけることで正しい判断をし、騙されるリスクを減らすことができます。
■ サブリース契約を正しく理解する
「かぼちゃの馬車」事件をきっかけに、2020年12月15日に「サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置」、いわゆる「サブリース新法」が施工されました。
「かぼちゃの馬車」で話題となったサブリース契約ですが、メリットもあるのです。サブリース契約のメリット・デメリット、導入にあたってのポイントについては「サブリースとは」で詳しく詳細しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「かぼちゃの馬車」事件は、詐欺にも近い手口のその悪質性から社会問題に発展しました。こういった被害にあわないためにも、今後、不動産投資を考える場合、「かぼちゃの馬車」事件を教訓とし、サブリースやシェアハウスの知識や理解を深めていただきたく思います。
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この記事の執筆者紹介
ミノラス不動産
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