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賃貸住宅などの建築を考えるとき、「敷地にどれくらいの大きさの建物を建てられるのか」は、土地を有効活用するうえで重要なポイントです。
2019年(令和元年)6月に施行された「建築基準法の一部を改正する法律」により、準防火地域の耐火・準耐火建築物の建ぺい率が10%緩和されています。住宅などが密集する準防火地域の建ぺい率を緩和することにより、延焼防止性能が高い建物への建て替えを促進するための法改正です。
1.建物の大きさを決める「建ぺい率」と「容積率」
賃貸住宅などを新築・建て替えする際、建物をどれくらいの大きさにできるかを考えるうえで、「建ぺい率」と「容積率」が重要な基準となります。
(1)建ぺい率とは
建ぺい率は「土地に対して建物をどれくらいの面積まで建てられるか」を示すものです。建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合で、次の計算式で求めます。
建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100
ここでいう「建築面積」とは、建物を上から見たときの面積のことです。一方、「敷地面積」は建物を建てる土地そのものの面積を指します。

たとえば、200㎡の敷地に、1階の床面積が120㎡、2階の床面積が100㎡の2階建てを建築するとします。この場合、建物を上から見たときの面積である「建築面積」は120㎡、土地そのものの面積である「敷地面積」は200㎡です。この例では、建物を上から見たときの「建築面積」を、1階の床面積120㎡として考えます。よって、建ぺい率は以下の計算で求めることができます。
建築面積 120㎡÷敷地面積 200㎡×100=建ぺい率 60%
(2)容積率とは
容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合を示すものです。延べ面積とは、建物の各階の床面積を合計した面積を指します。容積率は、次の計算式で求めます。
容積率(%)=延べ面積÷敷地面積×100
先ほどの例では、1階の床面積120㎡と2階の床面積100㎡を合わせた220㎡が延べ面積となります。よって、容積率は以下の計算で求めることができます。
延べ面積 220㎡÷敷地面積 200㎡×100=容積率 110%
このように、建ぺい率は「建物を上から見たときの大きさ」、容積率は「建物全体の床面積」に関する基準です。どちらも、土地にどれくらいの規模の建物を建てられるかを考えるうえで重要な指標となります。
建ぺい率と容積率にはそれぞれ上限があり、建築基準法では用途地域などに応じて定められています。
2.建築基準法の改正で建ぺい率10%緩和
この改正の背景には、建築物が密集する市街地の防災性を高めるという目的があります。防火地域・準防火地域では、火災が発生した場合に周囲の建築物へ燃え広がるのを防ぐため、建築物に一定の防火性能が求められています。
建築物が密集する地域では、火災が発生した際に延焼が広がることで、被害が大きくなるおそれがあります。そこで、延焼防止性能の高い建築物への建て替えを促進し、市街地の安全性を高めるための仕組みとして、一定の建築物について建ぺい率を10%緩和する制度が設けられました。
一方で、建て替えの際には、建物の構造や規模などによってさまざまな条件を考える必要があります。そこで、一定の防火性能を有する建築物について建ぺい率を緩和し、建て替え後の建物により広い建築面積を確保できるようにすることで、延焼防止性能の高い建築物への建て替えを促す仕組みが設けられました。
どのような建物が緩和の対象になる?
建ぺい率10%の緩和を受けられるのは、一定の防火性能を有する建築物です。
防火地域では、原則として「耐火建築物等」が対象となります。準防火地域では、「耐火建築物等」または「準耐火建築物等」が対象となります。
「耐火建築物」とは、柱や梁、壁などの主要な構造部分を耐火構造とするなど、火災が発生した場合にも建物が倒壊しにくく、延焼を防ぐための性能を備えた建築物です。鉄筋コンクリート造や、耐火被覆を施した鉄骨造などが該当します。
「準耐火建築物」は、耐火建築物ほどの耐火性能ではないものの、一定時間、火災による延焼や建物の倒壊を防ぐための性能を備えた建築物です。鉄骨造や、一定の防火措置を施した木造などがあります。
建ぺい率10%の緩和について、改正前と改正後の対象を整理すると、次のようになります。表内の太字部分が2019年の改正によって追加された対象です。
| 地域 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 防火地域 | 耐火建築物 | 耐火建築物 耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物 |
| 準防火地域 | ー | 耐火建築物 準耐火建築物 これらと同等以上の延焼防止性能を有する建築物 |
大田区では、防火地域以外はすべて準防火地域等に指定されています。所有する土地の区域指定によって適用される建築規制が異なるため、建て替えや新築を検討する際には、まず土地の指定を確認しておくことが大切です。
大田区の「まちマップおおた(都市計画・景観計画)」では、住所を指定して用途地域や建ぺい率・容積率、防火・準防火地域などの都市計画情報を確認できます。ただし、掲載されている都市計画情報は概略位置を示す参考情報であり、内容を証明するものではありません。実際の建築計画では、個別に確認する必要があります。
3.建ぺい率10%の緩和で、建築面積はどれくらい増える?
では、建ぺい率が10%緩和されると、実際に建築できる面積はどれくらい変わるのでしょうか。ここでは、建ぺい率60%の準防火地域にある200㎡の土地を例に、緩和前と緩和後を比較します。
| 敷地面積 | 建ぺい率 | 建築面積 | |
|---|---|---|---|
| 改正前 | 200㎡ | 60% | 120㎡ |
| 改正後 | 200㎡ | 70% (10%アップ) | 140㎡ (20㎡アップ) |
表2のように、敷地面積が200㎡で建ぺい率が60%の場合、建築できる面積は120㎡です。これに対して、建ぺい率が10%緩和されて70%になると、建築面積は140㎡となり、20㎡増やせることになります。
20㎡は、賃貸住宅の間取り図などで使われる1畳=1.62㎡として単純に換算すると、約12畳分に相当します。この建物を3階建てで計画すると、単純計算では延べ床面積が60㎡、約37畳分増えることになります。
ただし、実際の建築計画では、階ごとに形状や床面積が異なる場合があるほか、容積率や前面道路の幅員、斜線制限、日照・通風・採光など、さまざまな条件によって建築できる建物の規模が決まります。そのため、建ぺい率10%の緩和によって増えた20㎡を、各階でそのまま利用できるとは限りません。
増えた建築面積をどのように使うかによって、住戸数を増やす、各住戸の広さを確保する、共用部分を充実させるなど、建物の計画にも違いが出てきます。
このように、建ぺい率が10%緩和されることで、同じ敷地面積でも建築できる建物の規模や計画に選択肢を持たせられる可能性があります。賃貸住宅や賃貸併用住宅の建築を検討するオーナー様にとっては、限られた土地をどのように活用するかを考えるうえで、知っておきたい制度です。
※1畳=1.62㎡として単純計算しています。実際の賃貸住宅では、間取りや共用部分、壁・柱などの配置によって、居室として利用できる面積は異なります。
4.建ぺい率がさらに10%緩和される場合とは
建ぺい率には、防火性能による緩和とは別に、特定行政庁が指定する角地などを対象とした10%の緩和があります。条件によっては、これらの緩和を組み合わせることもできます。
例えば、建ぺい率60%の土地が準防火地域にあり、一定の防火性能を有する建築物を建てることで10%緩和され、さらに角地による10%の緩和も適用される場合、建ぺい率は60%から80%になります。
敷地面積が200㎡の場合、建ぺい率60%では建築面積は120㎡ですが、80%まで緩和されると160㎡となり、40㎡増やせることになります。
ただし、角地であれば必ず緩和を受けられるわけではなく、対象となる土地の条件や指定の内容を確認する必要があります。
5.建ぺい率以外の建築規制にも注意
建ぺい率が緩和されると、同じ敷地でも1階部分などの建築面積を増やせる可能性があります。一方で、建物全体の延べ面積には容積率による上限があるため、建ぺい率が緩和された分だけ、建物全体を大きくできるとは限りません。
また、前面道路の幅員や高さ制限、斜線制限などによって、建築できる建物の規模や形状が制限される場合があります。日照・通風・採光などの条件も、実際の建物の計画に影響します。
このように、建ぺい率が10%、あるいは条件によって20%緩和される場合でも、建ぺい率だけで実際に建築できる建物の大きさが決まるわけではありません。土地に適用される規制や緩和の内容を確認したうえで、建築士などの設計者に相談しながら、具体的な建築計画を検討することが大切です。
6.まとめ
建ぺい率の緩和を活用できるかどうかは、所有する土地の地域指定や建築物の構造などによって異なります。賃貸住宅の建て替えや新築を検討する際には、まず所有する土地にどのような建築規制が適用されているのかを確認しておきましょう。
建築規制については、各自治体が用途地域や建ぺい率、容積率、防火地域・準防火地域などの情報を公開しています。土地の所在地を管轄する自治体のホームページなどで最新の情報を確認し、具体的な建築計画については、建築士などの専門家に相談することをおすすめします。
建ぺい率の緩和は、同じ土地でも建築できる建物の規模や計画に影響する制度です。所有する土地の条件を確認したうえで、どのような建物を建てられるのか、土地をどのように活用できるのかを考えてみましょう。
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