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2019.11.11

旧法借地権の「建物の朽廃」とは

 今回は、旧法借地権の建物の「朽廃(きゅうはい)」という用語について、説明します。

 旧法借地権では、借地権上に建物が存在し、かつ借地権上の建物が借地人名義で登録されていることが対抗要件(第三者へ主張できる要件)となっており、建物が「朽廃」していると判断された場合、借地権は消滅してしまうのです。

 しかしながら、この「朽廃」しているという判断は非常に難しく、判例でも意見が分かれるところです。一つの判例を基に朽廃の状況、判断基準について解説していきます。

貸主と借主

 借地人の先代であるB介さんは、普通建物所有の目的で、昭和43年12月31日に、地主の先代であるA太さんから賃貸借期間20年の定めで借地しました。その後、借地契約は、昭和63年12月30日に法定更新されました。

 地主の先代であるA太さんは平成4年8月5日に貸主の地位をA郎さんらに相続し、借地人の先代であるB介さんは昭和61年4月10日に借地人の地位をB子さんらに相続しました。

 借地上の建物は建築から40年経過して朽廃していたことから、地主のA郎さんらは借地人のB子さんらにたいして、借地権が消滅したとして、建物収去・土地明渡しを求めました。

建物の状況

※写真はイメージです。

  • 昭和20年代に建築され、築年数は40年を超えている。
  • 部分的に補修・修理はなされているものの、土台・柱などの構造部分の修理は行われていない
  • 正面から見て建物右側が傾斜しており、屋根の棟の形も変形している。
  • 屋根の瓦も薄くなり、割れやズレも見られ、雨漏りが発生しており、室内の腐食も激しい。
  • 無人のまま長年放置されてきた。
  • 再度使用するには早急に基礎補修、土台の全面取り替え、建物の傾斜の修復、瓦の全面取替え、電気・ガス・給排水設備の全取替えなど、全面的な補修が必要

判旨

本判決では、上記の借地権の消失が認められました。


本件建物は建築後40年という長期間が経過し、全体的に劣化が進んでいるほか、無人のまま長年放置され、補修も充分にされておらず、保守管理が不十分であったことから、基礎・土台・柱及び屋根といった構造部分にほぼ全面的な補修を行わなければ使用できない状況に至っていることを考慮すると、その補修には新築同様の費用が必要であると推認される。すでに建物としての社会的、経済的効用を失うに至り、朽廃しているので本件借地権も消滅したと認められる。

(東京高判平5・8・23判時1475・72)


 本判決は、建物の「朽廃」に関し、建物の状況を子細に検討し、建物の現況(劣化状態)、管理状況、使用のために必要な修繕内容の観点から、建物の社会的・経済的効用の有無を判断し、朽廃を認めています。この判決は、借地上の建物の朽廃について、裁判所は厳格に判断しているところを示しており、本判決は朽廃の肯定事例として、実際の主張立証のポイントを考えるにあたり非常に有用であると思われます。

 借地人さんも高齢化し、加えて一人暮らしの借地人さんも多くいらっしゃいます。そのため、実際に当てはまる事例も増えてくる可能性があります。借地権は一つ一つで事例が異なりますので、お悩みがある場合は専門家への早めのご相談をオススメします。

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