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共有不動産を解消して円満相続
相続対策というと真っ先に「節税」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、相続が発生した時に、次世代が揉めないようにすること、困らないようにすることも立派な相続対策と言えます。過去の相続や贈与の事情により不動産を共有された方が、その共有関係を解消することもその1つではないでしょうか。
今回は共有物の解消方法について、税務面を含めてご紹介します。
なぜ共有状態になるのか?
不動産が共有になることはよくあります。例えば、相続があった際に全員平等にしようとした結果やマンションを購入したご夫婦が共に資金を拠出した場合、二世帯住宅の建築のため親子で拠出した場合などが考えられます。
相続人の数と不動産の数が合わなくなったり、不動産の収益力が極端に違ったり…。平等な分割ができず無用な争いを生まないように共有にすることは仕方のないことだと思います。
ただ、共有の場合、単独でできることと共有者の同意が必要なものがあります。
単独でできること
- 保存:現状維持のための修繕工事など
- 使用:自ら居住するなど不動産を利用すること
共有持ち分の過半数の同意が必要なこと
- 管理:賃貸物件として短期間の利用をすること(土地5年、建物3年)
- 改良:現状維持ではなく資産価値を向上させるようなリフォームやリノベーション
共有者の全員の同意が必要なこと
- 解体:建て替えや解体をすること
- 賃貸:管理を超える長期間の賃貸を行うこと
- 売却:物件を売却すること
特に全員の同意が必要なことはその影響も大きいため、せっかく賃貸や売却することで利益を得ることがあったとしても誰かの反対により機会を逃すこともあります。
交換の特例
税務においては、固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例があり、これを「固定資産の交換の特例」と言います。この特例の要件は、次の通りです。
- 1.同じ種類の固定資産であること
- 2.双方の資産が1年以上保有しているもので、かつ、交換の目的で取得していないこと
- 3.交換後、従前と同一の用途に供すること
- 4.両者の差額がある場合、多い方の価額の20%以内であること
この特例を適用できれば、譲渡税はなしになりますが、上記4の差額が一番の問題となります。それは「価額=時価」ということになるのですが、税法上の「時価」は税目によって異なります。
「時価=相続税における時価(路線価など)」と考えてしまうかもしれませんが、交換の特例が所得税法の規定であり、「時価=実勢価額」という考え方になります。そのため、第三者間での交換であれば合意価額で良いのですが、親族間ということであれば価額根拠の証明資料を用意しておく必要があります。
「交換の特例」事例
AさんとBさんは二人兄弟です。ご両親からの相続によって、コーポ〇〇とハイツ△の2つの共有不動産を取得していました。
Aさんが現当主となっており、Bさんは結婚されて別生計となっていました。しかしながら、お二人とも高齢になってきたことから、「相続対策の下準備として共有関係の解除をしよう」と考え、専門家に相談することにしました。
お二人がお持ちの共有物件は、いずれも賃貸マンションでした。そこで、時価の算定を不動産鑑定士に依頼し、各々の価額を算定してもらうことにしました。鑑定の結果、2つの共有不動産はほぼ等価であるとされました。これによって、「固定資産の交換の特例」の要件に該当するものとして、契約書を締結し、不動産登記を行い、それぞれ1物件を単独所有にすることができました。
このケースでは物件の大きさや部屋数、立地などかなり似通っていたため、うまくいきました。しかしながら、A様とB様のような特殊関係者(親族)の場合は差額に贈与税が課税される可能性もありますので、顧問税理士先生等へご相談いただくことをオススメします。
立体買替えの特例(共同住宅建設)
固定資産である土地をマンションデベロッパーに譲渡し、その敷地に同デベロッパーが建築した中高層耐火建築物を取得したときは、取得資産相当までは譲渡がなかったものとする特例があり、これを「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買替え(交換)特例(いわゆる立体買替え特例)」といいます。
等価交換という表現が用いられることもありますが、前回記載した交換特例と混同してしまう可能性がありますので、「立体買替え」という表現にしております。
この特例の要件は、おおまかに下記のとおりです。
- 東京23区、武蔵野市の全域など租税特別措置法で定められた地域にあること
- 地下3階以上の中高層の耐火共同住宅の建設を目的とすること
- 売主または飼い主が建築をすること
- 取得した日から1年以内に個人の事業または居住の用に供すること
この特例を適用できれば、譲渡税はなしになりますが、交換を行った場合に交換差金が生じる場合があります。その場合には、当該交換差金から取得費として計算した一部金額を差し引いて、譲渡税が掛かることになります。
また、税務上の特例の多くは保有期間が何年以上という要件があるものが多いですが、この特例は保有期間に縛りがなく、短期保有のものであっても適用できることが特徴となります。
「立体買替えの特例」事例
A様は、奥様と長男B様、長女C様の4名家族でご自身の自宅兼賃貸アパートにお住まいでした。
場所は、東京23区内で立地はとても良かったのですが、アパートが老朽化してきており、また、ご自身の年齢や持病も考えて相続の対策もしたいと考えておられたところ、とある大手デベロッパーから隣地と併せてマンションを建築したいという連絡があり、ご相談に来られました。
不動産の状況としては、当該建物はA様所有でしたが、土地は4名で共有となっており、さらに土地が複数に分筆され、共有割合が各区画で異なるものでした。
そこからデベロッパーとの話し合いの中で立体買換えの特例が適用できるかを確認し、要件を満たしていることが判明したため、後押しをさせて頂きました。
その結果、交換差金分の納税は行ったものの譲渡税を抑えることが出来たうえで、新たに建築されたマンションの6室を取得することができました。
さらに、お悩みであった共有についても1室をA様と奥様の共有で居住され、そのほか5室をA様、B様、C様の単独所有とすることができ、資産の組み換えもうまういくことができました。
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ミノラス不動産
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