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公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度
司法書士ゆかり事務所 司法書士 荻島一将
遺言を作成しておく際にもっとも重要なことは、ご自身のご意思がきちんと実現するような、実効性のある遺言を作成しておくことです。
今回は、代表的な遺言の方式である公正証書遺言と自筆証書遺言、さらに自筆証書遺言を法務局に預けておける遺言保管制度などについてご紹介します。
公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言を公証役場の公証人に作成してもらう遺言です。
遺言の中身を公正証書という厳格な形で作成できることに加え、相続開始後は、相続人の申請により全国の公正証書遺言を検索することができます(ただし、検索できる遺言は、平成元年以降に作成されたものに限ります)。
公正証書遺言があれば、原則として何らの手続も経ず、そのまま相続登記その他の相続手続全般に使えます。もっとも、公正証書遺言を作成するには、推定相続人等以外の証人を2名立ち会わせなければならないなど、遺言者ではない他者の関与が必要となるため、作成に手間暇がかかります。また、遺言者の資産のボリューム等により、作成手数料もそれなりにかかります。
自筆証書遺言
従来の自筆証書遺言は、その内容の全てを自筆で書かなければならず、財産に不動産や金融機関の口座等が複数ある場合、割と大変でした。そして、自筆証書遺言の場合、保管している場所は、遺言を書いた人しか知らないことも多く、せっかく作ったのに、その存在を知られることなく相続手続が進んでしまうなどということもよくありました。また、相続が開始すると、検認という裁判所による手続を要するため、結果的に相続人全員の関与が必要となったりもします。
法務局による自筆証書遺言書保管制度
2020年に、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が新設されました。この新たな制度を利用すれば、不動産の表記や金融機関の表記など、自筆で書くとかなり面倒な情報を登記事項証明書や通帳のコピーの添付で済ませることができるので、遺言を書く人の労力が大幅に軽減されます。
また、作成した遺言は、法務局に保管の申請をして、保管証を受け取り、それを家族に教えておけば、中身を知られないまま保管してもらうことができますし、遺言の改ざんや紛失のおそれなく、安心して遺言を管理しておくことができます。そして何より、相続開始の際に、家庭裁判所の検認が不要になるという大きなメリットがあります。
いずれの場合も内容の精査が必要不可欠
それでは、この新しい遺言書保管制度があれば、公正証書遺言の制度は必要なくなるのか、というと、そういうことでもないと思います。
法務局が保管するといっても、自筆証書遺言の形式的な有効性のみが審査されるだけで、その内容までを法務局で逐一チェックするわけではありません。遺言者本人が自筆で作成するため、公正証書遺言と比べたら、内容面の精査はどうしても甘くなりがちです。
公正証書遺言は、内容を法曹等出身の公証人が作成するため、形式や内容の確実性は、自筆証書遺言よりも相当高いものであることは、今後も変わらないといえるでしょう。
大切なのは、遺言者本人が、その意思を明確にして、実効性のある内容の遺言を作成することです。そのためには、専門家のサポートを受けながら遺言を作成することをおすすめします。
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