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地下埋設物がある土地や土壌汚染地は評価が下げられる!?
ミノラスホープ株式会社 税理士 岡田 祐介
土地の形状はさまざまで、道路付けや傾斜などによってその相続税評価額は減額されることもあります。では、形がよく傾斜などがなければ減額されないのでしょうか?今回は土地に地下埋設物や土壌汚染があった場合についてお話させていただきます。
地下埋設物がある場合の相続税評価額
地下埋設物とは、建築資材、コンクリート、ブロック、矢板、ガラ、古い井戸、土管、浄化槽、産業廃棄物等をいいます。このあと土壌汚染についてもご説明しますが、大きな意味でとらえると土壌汚染も地下埋設物に入るかもしれません。
では、地下埋設物があると、土地にどのような影響が想定されるのでしょうか。まず、地盤の強度についてです。強度が弱いと、地震などが起こった場合に倒壊等のリスクが高くなります。強度だけでなく、地下埋設物が有害物質等の場合には、衛生面・健康面で大きな問題が生じることも考えられます。
こういった理由から、地下埋設物がある場合には適切に撤去する必要があるのです。撤去するには費用等が発生することため、地下埋設物がある土地はそれがない土地に比べ価値が下がります。地下埋設物がある場合の相続税評価額は、下記の方法で算出されます。
【地下埋設物がある場合の相続税評価額】 地下埋設物がないとした場合の相続税評価額 - 撤去費用の見積額 × 80% |
ただし、地下埋設物がある土地すべてにおいて減額評価ができるわけではないので注意が必要です。例えば、相続開始時に地下埋設物が存在しても、ガソリンスタンドの敷地として有効に土地利用されていたため、撤去費用の控除を認められなかった判例もあります。
このように、地下埋設物があるだけではなく、それによって利用が制限されていたり、相続後に売却した際にその売却代金に地下埋設物の存在が考慮されていたりした場合などには地下埋設物の減額が可能となっています。ちなみに、なぜ撤去費用の80%とされているかというと、公示価格の80%相当が相続税評価額とされているためです。
土壌汚染地がある場合の相続税評価
土壌汚染地とは、土壌の特定有害物質による汚染のある土地をいいます。特定有害物質とは、土壌汚染対策法第2条に掲げる下記の物質が土壌に含まれることに起因して、人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものをいいます。
一 カドミウム及びその化合物
二 六価クロム化合物
三 クロロエチレン(別名塩化ビニル又は塩化ビニルモノマー)
四 二―クロロ―四・六―ビス(エチルアミノ)―一・三・五―トリアジン(別名シマジン又はCAT)
五 シアン化合物
六 N・N―ジエチルチオカルバミン酸S―四―クロロベンジル(別名チオベンカルブ又はベンチオカーブ)
七 四塩化炭素
八 一・二―ジクロロエタン
九 一・一―ジクロロエチレン(別名塩化ビニリデン)
十 一・二―ジクロロエチレン
十一 一・三―ジクロロプロペン(別名D―D)
十二 ジクロロメタン(別名塩化メチレン)
十三 水銀及びその化合物
十四 セレン及びその化合物
十五 テトラクロロエチレン
十六 テトラメチルチウラムジスルフィド(別名チウラム又はチラム)
十七 一・一・一―トリクロロエタン
十八 一・一・二―トリクロロエタン
十九 トリクロロエチレン
二十 鉛及びその化合物
二十一 砒ひ素及びその化合物
二十二 ふっ素及びその化合物
二十三 ベンゼン
二十四 ほう素及びその化合物
二十五 ポリ塩化ビフェニル(別名PCB)
二十六 有機りん化合物(ジエチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名パラチオン)、ジメチルパラニトロフェニルチオホスフェイト(別名メチルパラチオン)、ジメチルエチルメルカプトエチルチオホスフェイト(別名メチルジメトン)及びエチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト(別名EPN)に限る。)
土壌汚染地がある場合の相続税評価は、下記の計算式で算出されます。
【土壌汚染がある場合の相続税評価額】 土壌汚染がないものとした場合の評価額 - (①浄化・改善費用に相当する金額 + ②使用収益制限による減価に相当する金額 + ③心理的要因による減価に相当する金額) |
控除される3つの項目について説明します。
①浄化・改善費用に相当する金額
浄化・改善費用とは、土壌汚染の除去、遮水工封じ込め等の措置を実施するための費用をいいます。地下埋設物の時と同様の理由で実額の80%相当額になります。
②使用収益制限による減価に相当する金額
使用収益制限による減価とは、土壌汚染の除去以外の措置を実施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる減価をいいます。
③心理的要因による減価に相当する金額
心理的要因による減価とは、土壌汚染の存在(あるいは過去に存在した)に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価をいいます。
項目の数だけを見ると大きく控除できそうにも思えますが、②及び③は具体的な基準が定められていないため正確な金額算定を行うことは実務上不可能に近い作業と言えます。そのため、積極的に控除を狙うには、税務当局からの指摘を受ける可能性が高いことを前提に、不動産会社などの意見を参考にして減額する金額を説明できる資料を作っていくことになるかと思います。
令和3年12月1日に不服審判所で裁決された事案においては、「そもそも浄化・改善費用が必要かどうか」という点が争われています。その事案においては、都道府県知事に対する、土壌汚染対策法上の汚染除去等の措置を講ずることが必要な要措置区域又は形質変更時要届出区域の指定の申請を行っていなかったため、税務署側は改善費用の発生に確実性がないとして指摘をしていました。
最終的に不服審判所は「土壌汚染が土地の価格形成に影響を及ぼす場合を、法令により汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じ、その除去等の費用が発生することが確実である場合に限定する理由はない」として税務署の処分の取り消しを認める形となりました。しかし、その過程の中で、改善費用の範囲としてその土地の最有効使用が何かという点に触れています。最有効使用とは、ある不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用方法をいい、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものであるものとされています。
地下埋設物や土壌汚染がある土地については評価額を下げることが可能です。ただ、そのためには埋設物があるかどうか、汚染されているかどうかという調査を事前に行う必要が生じます。この費用が高額であるため、最終的に減額ができても費用の方が高くなってしまったということもあります。もし、実際に調査の実施を検討する場合には、税理士だけではなく不動産のプロにも相談してから行うことをオススメいたします。
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