お役立ち情報
大切な資産を「守る」「つなぐ」「増やす」ために
役立つ不動産の市況や経営の情報をご紹介
大規模修繕積立金共済制度
「大規模修繕工事をしないといけないのは理解しているが、まとまった資金が用意できない」「大規模修繕工事用に積立したいけど、分譲マンション管理組合のように経費算入できないのか」
こういった考えのオーナー様も少なくないのではないでしょうか。国土交通省が2017年に公表した「民間賃貸住宅の大規模修繕等に対する意識の向上に関する調査検討報告書」によると、修繕または大規模修繕を実施していない家主の実施しない理由として、「資金的余裕がない」の割合が28.1%と最も高くなっています。
そんな賃貸オーナー様の悩みである、大規模修繕工事にかかる積立費用の経費化が実現するのをご存知でしょうか。今回はこの「賃貸住宅修繕共済」についてお伝えします。
賃貸住宅修繕共済とは
2021年11月16日に行われた自由民主党賃貸住宅対策議員連盟(以下、ちんたい議連)の臨時総会において賃貸住宅にかかる共済制度の認可が下りたと発表されました。全国賃貸管理ビジネス協会、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会、公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会の3団体が協力して、全国賃貸住宅修繕共済協同組合として共済を提供します。
賃貸住宅修繕共済により、修繕費を共済の掛け金としてその年の経費として認められ、全額損金算入できるようになります。共済開始当初の対象となるのは、屋根(屋上)と外壁のみです。ちんたい議連は、今後、23年度予算編成・税制改正の重点要望事項として、エレベーターや給排水管などの建物設備、エアコンや給湯器などの内装設備、水回り設備について対象とするよう、拡充を求めています。これにより、オーナー様は計画的に修繕に備えることができる、と注目されています。
ポイントは”長期修繕計画”
この賃貸住宅修繕共済を利用するにあたって、長期修繕計画の提出が必要となります。最初にご紹介した国土交通省の調査報告の中で「長期修繕計画を作成しているか」という設問に対して、「すべての住宅で作成」16.8%、「大半の住宅で作成」3.3%、「半数程度の住宅で作成」1.0%、「一部の住宅で作成」1.7%の回答を合わせた、22.80%しか長期修繕計画を作成していないという結果となりました。
そもそも、大きな費用が必要となる大規模修繕が、どうして必要なのでしょうか。その理由は、適切にメンテナンスをしておかなければ、建物の様々な箇所が劣化し、不具合が生じるためです。例えば、屋根の劣化が進むと雨漏りが、給排水管が詰まると排水が逆流したりしてしまいます。こうした不具合が生じると、ご入居者様にご迷惑をお掛けするだけでなく、場合によっては事故やケガの原因にもなってしまいます。
修繕の目安は、各部分の素材などによって異なります。上の図以外にも、配管の洗浄や外構の修繕、室内設備の修理なども実施する必要があります。「いつ・どこの部分を・どれくらいのお金をかけて・どのような工事をするのか」という見通しを持っておくために、長期修繕計画は有効と言えます。
また、大規模修繕が必要な理由として、築年数が経過して劣化が進むと、周辺の競合物件と比較して競争力は低下してしまうことが挙げられます。競争力が低下しご入居者様が見つからない場合は、当然賃料収入が落ちて収益の確保ができなくなります。その結果、大規模修繕費用を確保できず、一層建物老巧化が進み、更なる競争力の低下につながってしまいます。この「負のスパイラル」に陥らないためには、長期修繕計画を立て、計画的に費用を準備し、計画に沿った修繕を実施する必要があるのです。
まとめ
賃貸住宅修繕共済についてはまだ「認可された」という報道しかされておらず、明確となっていない点も多くあります。実際には、どのオーナー様にも有効な制度かどうかは、検討が必要です。積立金の経費化で、所得税住民税は少なくなりますが、積立制度なので、実際の修繕工事を実施するまでは、手元のキャッシュフローは悪くなる可能性があるからです。
長期修繕計画を作成するには、専門家に依頼する必要があります。もし、今現在長期修繕計画を立てていないオーナー様は、これを機会に計画を立ててみてはいかがでしょうか。
▶オススメの大規模修繕 関連記事「長期修繕計画の基本とガイドラインの改定」
「建物のライフサイクルコストと長期修繕計画」
「大規模修繕や日常メンテナンスの効果について」
オススメ勉強会
関連サービス
この記事の執筆者紹介
ミノラス不動産
私たちは次世代へ大切な資産を「守る」×「つなぐ」×「増やす」ために、お客様の不動産継承計画を共に実現させる不動産サポート企業です。