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家族信託 ご利用前の基礎知識
司法書士ゆかり事務所 司法書士 荻島一将
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遺言や任意後見などと並ぶ生前対策として「家族信託」というキーワードを耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。遺言や成年後見制度といった従前に利用されてきた制度ではできなかったことが可能になったり、解決出来たりするといわれることから、生前対策として注目を集めています。もちろん、適切に利用できれば、かなり自由自在な設計が可能です。といっても、どんな場合にもすべてを解決する万能な「魔法の杖」ということではありません。利用するには、基本的な性質を抑えておく必要があります。
「家族信託」は契約
まず、「家族信託」というのは、信託銀行等が業務として行っている「商事信託」とは異なり、一般人同士が締結する「民事信託」のひとつです。その中でも特に家族内で締結する信託契約のことを「家族信託」と呼んでいます。つまり、「家族信託」は個人間、主に家族内で締結する契約です。
認知症対策として紹介されることも多い「家族信託」ですが、行為能力が制限された人は契約締結することができないため、既に認知症と診断され判断能力が失われてしまうと、家族信託の契約を締結することはできません。
受託者は家族などの一般人
「商事信託」が信託銀行など信託行為のプロと締結するものであることに比べ、民事信託である「家族信託」は、例えば、親が子どもと締結する個人間の契約です。
信託契約には、主に、委託者、受託者、受益者という3人の登場人物がいます。具体的には、ご高齢となったお父さんが委託者となって、長男を受託者として、お父さん自身やお母さんの生活のためにお父さんの財産を管理してもらう、という契約を締結するといったケースでは、お父さんは、自分の財産を長男に託して、その管理や処分を任せるという契約を結ぶことになります。この契約が実効性のあるものとして機能するためには、受託者である長男がその信託契約の内容をしっかりと理解し、その契約通りに動いてくれる必要があります。したがって、信託契約では、誰を受託者にして財産管理等を託すか、ということが非常に重要です。受託者としての仕事を引き受けて、きちんと遂行してくれる家族がいなければ、そもそも信託契約は成り立ちません。
「家族信託」でできること
とはいえ、家族信託は自由自在に設計できるので、性質を理解し適切に活用することで、従来の制度のみでは実現がかなわなかったことでも、その実現可能性が大いに広がります。
例えば遺言では、財産を誰に相続させるかを決めることはできますが、指定できるのは自分の相続に関してのみで、その後の世代に誰が引き継ぐかまでは指定できません。一方、家族信託では、自分が亡くなったら配偶者に、配偶者が亡くなったら自分の子に、というように、数世代先までの遺産承継の指定が可能となります。
また、認知症になっても、成年後見制度を利用することで、成年後見人が財産管理をすることができますが、成年後見人は家庭裁判所が選任するため、財産の内容によっては、専門職の後見人が付され、家族は財産の処分などをすることはできません。他方、認知症対策として、元気なうちに家族信託契約を結んでおけば、家族である受託者が裁判所など他者の許可を得る必要もなく、信託財産の管理・処分をすることができます。
家族信託は、内容を自由に設定することができるため、多種多様な目的で設計することが可能です。その性質を正しく理解して、適切に利用することが大切です。
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ミノラス不動産
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