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前回のコラムでは定期借地権が設定されている底地部分の評価について説明しました。
今回は定期借地権の評価についてご説明させていただきます。
まずは前回の復習として定期借地権についてご説明します。定期借地権は平成4年8月に創設された新たな形態の借地権のことをいい、普通借地権との違いは契約の更新があるか否かです。
特徴として主なものは存続期間になりますが、一般定期借地権は50年以上、事業用は10年以上50年未満、特約付きは30年以上となっており、その存続期間はかなりの開きがあります。事業用は10年以上からのため期間設定として扱いやすく、よく見る形式かと思います。もちろん定期という名称通り、契約更新や延長はなく期間がくると契約は終了となります。
つぎに今回の本題である評価についてご説明します。
定期借地権の相続税評価については、原則法と簡便法の2種類があると通達において規定されています。
原則と簡便という名称から通常は原則法を使い、特殊な場合には簡便法を使うとイメージをしてしまいそうですが、今回の定期借地権の場合には実務上ほぼ簡便法を使って評価を行っています。
先の通達にある文言上は、「課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額」で評価するというように簡潔に規定されているので一見わかりやすく思います。しかし、その大事な評定するために必要な具体的な方法はまったく記載がありません。そのため、行うとすると定期借地権ごとに個別に不動産鑑定士に依頼をして鑑定評価を行う必要が出てきます。これはコストの面と申告までの期間の面でみなさまを圧迫してしまいますので、実務上では採用されないことが非常に多くなります。
それでは簡便法はどのように計算を行っていくのでしょうか。
簡便法の計算式は簡単にすると下記になります。
設定時の定期借地権割合
設定時の定期借地権割合とは、定期借地権を設定したときの更地価格に対応する定期借地権価格の割合のことで下記の算式により計算します。
簡単に言うと「設定時における時価ベースの定期借地権割合」ということです。分母と分子に分けてもう少し詳しく解説していきます。
まず分母の「定期借地権の設定の時におけるその宅地の通常の取引価額」とは通常の取引価額というとおり、実勢価格を意味します。
それでは結局鑑定評価が必要なのではと思われるかもしれませんが、実務法は定期借地権設定時の相続税評価額を0.8で割り戻して計算を行います。これは慣習的なものではなく、国税庁が作成している評価明細書のひな形にも記載があることから認められた方法といえます。
つぎに分子の「定期借地権の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額」ですが、こちらはかなり煩雑です。通達の紹介は長すぎるため割愛しますが、必要な要素を用語として表現すると下記になります。
- 返還を要しない権利金等
- 返還を要する保証金等の利息相当
- 差額地代
これらの合計額が分子の金額となります。
1返還を要しない権利金等
定期借地権に関わらず借地権を設定するときに借地人が地主に一定の一時金を支払う慣行があります。返還を要しない権利金等とは、この一時金ことです。もう少し具体的に説明すると返還を要しない権利金等とは主に下記の2つとなります。
- 権利金、協力金、礼金などその名称のいかんに関わらず,定期借地契約の終了時に返還を要しないもの
- 設定時に契約期間の賃料の一部又は全部を一括前払いした一時金で返還を要しないもの
返還を要しない権利金等は、定期借地権設定契約書、土地賃貸借契約書、マンション売買契約書等に記載されておりますので算出の際には契約書を拝見させていただくこととなります。
2返還を要する補償金等の利息相当
定期借地権の設定に際し、借地人から地主に対して保証金や敷金を預託することがありますが、この保証金等は将来借地契約が終了したときに返還される性質のものです。そのため、この保証金等が低利又は無利息だった場合の経済的価値を反映させるため利息相当という形で計算に盛り込みます。具体的には下記算式により計算します。
かなり複雑そうな計算式になっていますが、前回のコラムを見ていただいた方は複利年金現価率という用語に覚えがあるかもしれません。これは国税庁のホームページに毎年記載されてきますのでご自身で計算するはせず、表から見つけてくるという作業になります。
また、約定利率は定期借地権契約において借地人と地主の間で取り決めをした保証金にかかる利率のことをいい、定期借地権設定契約書等に記載があるはずなのでそこの数値を持ってきます。もし無利息の場合には0円ということになります。
3差額地代
差額地代とは、適正値代よりも低い地代が設定されている場合に実質的に地主から借地人に贈与がされていたものとしてその贈与に相当する差額部分のことをいいます。
地主と借地人が第三者のときには発生しないため、親族間や同族法人の間での取引でのみ生じるとお考えください。差額地代の計算式は下記の通りです。
特に差額地代の額は算出が実務上相当に困難な代物です。
なぜかというと評価の方法が「総合的に勘案して判断」という相続税評価における特有の言い回しとなっており、このよう表現がある場合には判断基準が納税者側と当局側で別れる可能性が高くなるためです。
定期借地権の残存期間逓減率
定期借地権の残存期間逓減率の算式は下記の通りです。
内容としては名前の通り、残存期間によって評価が減っていく率を計算するもので、残存期間が長ければ分数が大きくなるため評価額は高く、短ければ評価額は低くなります。
なお、設定期間年数や残存期間年数につき、1年未満の端数があるときは6ヶ月以上を切り上げ、6ヶ月未満を切り捨てます。
前回に続いて今回も実際の計算式をご覧になっていただくことで頼んでいる税理士がどのような計算を行っているかを知る機会になればと思っております。
私自身もコラムを書きながらやはり相続税は個別性の高い計算式が多いため、税金面での対策を考えていくだけでもオーダーメイドにならざるを得ないなと改めて思いました。
情報化社会の中で紋切り型の説明がわかりやすく広く出回っているかと思いますが、みなさまの状況がそれと一致するとは限りません。
まずは一致するのかそうではないのかということからでも検証いただけると相続対策の第一歩になるかと思います。
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この記事の執筆者紹介
ミノラス不動産
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