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ミノラスホープ株式会社 税理士 岡田 祐介

前回の「国際相続~住所判定~」に続き、国際相続が発生した場合に関して説明します。

前回も掲載したとおり、判定の基準となるのは「国内住所の有無」「国籍」「相続以前に住所を有していた年数」の3つの項目です。今回は、その中の国籍について、解説します。
そもそも国籍とは、人が特定の国の構成員であるための資格をいいます。日本においては、国籍法にて日本国籍の取得、喪失の原因を定めており、2つ以上の国籍を有する人もいます。日本国籍を取得するには、(1)出生、(2)届出、(3)帰化の3つの方法があります。
(1)出生
出生により、その子が日本国籍を取得する要件は下記の3つです。
- 出生時に父又は母が日本国民であるとき
- 出生前に死亡した父が死亡時に日本国民であったとき
- 日本で生まれ、父母がともに不明のとき、又は無国籍のとき
※父、母とは、子の出生時に子と法律上の親子関係がある者をいいます。
例えば、日本国民である海外駐在員の夫婦の子が外国で生まれた場合も、①の要件があるため、その子は出生により日本国籍を取得することとなります。
ただし、出生によって日本国籍と同時に外国の国籍も取得した場合、出生日から3ヶ月以内に「出生届出」とともに「国籍留保の届出」を提出しなければ、出生時に遡って日本国籍を失うこととされています。「国籍留保の届出」は、市区町村役場又は在外公館に提出することとされており、当該届出が受理されることで戸籍上に国籍留保の旨が記載されます。この留保を受けることによって、その子は二重国籍者という扱いになります。なお、仮に「国籍留保の届出」の提出をせずに、日本国籍を喪失したとしても一定の要件を満たせば、法務大臣へ届け出ることによって日本国籍を再取得することができます。
(2)届出
届出により日本国籍を取得する要件は下記の3つです。
- 認知された子の国籍の取得
- 国籍の留保をしなかった者の国籍の再取得
- その他の場合の国籍の取得
①について、日本人の父と外国人の母の子は、父が胎児認知している場合を除き、出生により日本国籍を取得することはありません。ただし、一定の要件を満たす場合、法務大臣に届出を提出することによって、日本国籍を取得することができます。②については、(1)で留保の届出を失念した場合などで再取得する場合をいい、③については官報催告によって国籍を喪失した方の再取得等をいいます。
(3)帰化
帰化とは、日本国籍を有しない者(外国人)が日本国籍の取得を希望した場合に、国が許可を与えることによって、日本国籍を与える制度のことをいいます。このコラムでは割愛します。
納税義務の判定上で疑問となるのが、重国籍の場合だと思います。重国籍の場合には20歳まで、もしくは重国籍となった時から2年以内、いずれかのうちに国籍の選択を行う必要があります。選択を行った後であれば単純ですが、重国籍の期間に相続が発生した場合にはどうなるのでしょうか。結論としては、日本国籍があるものとして判定されます。そのため、相続税の対象となる財産が国内外問わない可能性があり、注意が必要です。
例えば、アメリカ人と結婚した場合について考えてみましょう。この時、市民権を取得しているか、市民権を取得せずに永住権のみを取得しているかによって、日本国籍の扱いが変わります。
市民権を取得している場合、日本国籍を喪失することとなり、日本にて喪失手続きを失念していたとしても自動的に日本国籍を失います。一方で、市民権は取得せずに永住権を取得した場合は、日本国籍のままとなります。
今回は税法という枠組みから出てしまっていますが、多様化が進む今後、ご自身ではなく次世代、次々世代が国際結婚する可能性も高まることでしょう。その際、税額のみならず、分割についても考え直さなくてはいけないことにもなりかねません。そんな時、今回のコラム内容がオーナー様に役立てば幸いです。
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