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大切な資産を「守る」「つなぐ」「増やす」ために
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賃貸経営において適切に経費を使うことは、建物の長寿命化や美観維持に繋がります。その結果、ご入居者様に選ばれ続け、資産を長く守ることができます。このコラムを通して、賃貸経営における視野を広げていただき、経費の使い方を考えるきっかけになれば幸いです。

先月号では、「デッドクロスと経費の上手な使い方」と題して、計画修繕の節税効果について記載しました。今月は、前回の内容を踏まえて、具体的な活用方法についてご紹介します。
賃貸経営の面白いところは、節税分を建物に化けさせることができる点です。築15年を超えると減価償却経費が少なくなりますので、築15年を境とした計画修繕をおすすめしています。
ここからの説明は、課税所得が1,600万円のオーナー・A様を想定し、「表1 現在の所得税率表」を基に計算します。

まず、オーナー・A様が何もしない場合について、上の表をもとに条件を確認し計算してみましょう。
- 表1より、控除額は153.6万円で、所得税率は33%が該当します。
- これをもとに所得税を計算すると、1,600万円×0.33-153.6万円=374.4万円となります。
これをもとに、どのような手を打てば、それぞれどのような効果が期待できるのかを考えていきます。
設備のまとめ交換で節約・節税
オーナー・A様が全室のエアコンまたは給湯器を300万円で取り替えることにしました。この時の節税効果を算出してみましょう。
- 課税所得は、1,600万円-300万円=1,300万円に減額されます。
- 表1より、控除額は153.6万円で、所得税率は33%が該当します。
- これをもとに所得税を計算すると、1,300万円×0.33-153.6万円=275.4万円となります。
よって、何もしなかった場合に比べて、所得税を99万円節約できることになります。また、住民税は一律10%なので、住民税も30万円安くなります。
さらに、「まとめ交換」がポイントになってきます。故障の度に1台ずつ個別で入れ替えると、1台あたりのコストも上がってしまいます。個別で入れ替えた場合に330万円はかかるとすると、まとめて交換するだけで、30万円ほどは節約できるでしょう。加えて、まとめて交換すると、業者によっては特典として、5年~10年の長期保証を付けてくれることもあり、メリットが大きいと言えます。給湯器の場合、過去の記事でご紹介した省エネ助成金の活用もおすすめです。
このとき、所得税・住民税・まとめ交換の節約の合計で、159万円の節税分が建物設備に化けることになります。
日常メンテナンスで節税・入居者満足
定期清掃や消防設備などの法定点検、排水管清掃などの予防メンテナンスも大切です。日常メンテナンスには以下のようなものが挙げられ、それぞれの費用はおおよそこのくらいになります。
- 定期清掃(月1回) 2万×12ヵ月=24万円
- 消防点検(年1回) 5万×1回=5万円
- 排水管清掃(3年~6年に1回)今年実施したとして、15万円

オーナー・A様が、上記の合計44万円を今年度の経費として使った場合についても計算してみます。
- 課税所得は、1,600万円-44万円=1,556万円に減額されます。
- 表1より、控除額は153.6万円で、所得税率は33%が該当します。
- これをもとに所得税を計算すると、1,556万円×0.33-153.6万円=359.88万円となります。
所得税▲14.52万円・住民税▲4.4万円となります。つまり、44万円の日常メンテナンスでも実質25.1万円で行えているとも言えます。
給水ポンプの取替で節税・リスク回避
給水ポンプの寿命は10年~15年とされていますが、実際は15年~20年くらいで取り替えが発生することが多いです。水道は最重要ライフラインのため、動作しなくなってから交換を手配すると深刻な問題に発展する恐れもあり、予防的な計画修繕が必要です。

オーナー・A様が、240万円で給水ポンプを交換するとします。ポンプは15年で減価償却することが多いです。そこで、単年度の節税効果を考えると、
- 所得税(240万÷15年)×0.33=▲5.28万円
- 住民税▲1.6万円 合計▲6.88万円となります。
- これが15年続くため、6.88万円×15年=103.2万円の節税効果があります。
一見高額に見える給水ポンプ交換も、課税所得が大きいオーナー様の場合は半値程度で予防保全ができると考えられます。なお、償却資産の残高が増えるため、固定資産税が多少上がります。
LEDへの交換で節税・省エネ
照明器具を1台5万円(工賃込)で20箇所交換した場合、単年度で100万円の経費申告が可能です。オーナー・A様の場合、
- 課税所得は、1,600万円-100万円=1,500万円に減額されます。
- 表1より、控除額は153.6万円で、所得税率は33%が該当します。
- これをもとに所得税を計算すると、1,500万円×0.33-153.6万円=341.4万円となります。
よって、所得税▲33万円と住民税▲10万円の節税効果があります。
さらに、LEDは蛍光灯に比べると、電気代が3分の1程度に抑えられます。たとえば、現在、電気代が年10万円掛かっていると、LEDに交換すると3万円近くに下がる可能性もあるのです。交換を1年先延ばしにすると、7万円余計に払うことになりますので、お早めに交換することをおすすめします。
修繕共済で節税・将来への備え
修繕共済の仕組みを使うと、将来の大規模修繕の積立金を全額経費に算入できます。たとえば、オーナー・A様が10年後に1,000万(年100万円)の掛け金とした場合、単年度で所得税▲33万円、住民税▲10万円となります。10年での節税効果は、430万円にも上ります。
この金額があれば、将来の大規模修繕において、グレードアップの選択肢が増えるので、非常に効果的です。
ただし、資金に余力が無いと不安が先行して共済にお金を掛けられないため、収入と経費のバランスを常に確認しておくことが大切です。
払ってしまった税金は取り戻せません。しかし、建物への投資を毎年計画的に行うことで、税務署が決めているように見える税金も、コントロールの範囲内だと考えられます。
設備のリニューアルやリフォーム、大規模修繕等が必要な時期は必ず到来します。過去に本誌で紹介した大規模修繕共済の活用も可能です。計画を立てられていない方は、お早目に立案することをおすすめします。建物や設備等の現状やフローチャートを定期的に確認することが、その第一歩です。
ミノラス不動産では、賃貸経営のコストコントロールのサポートとして、日常メンテナンスから長期的な修繕計画と実施の立案しています。また、キャッシュフローに与える影響についても、オーナー様の賃貸経営を良くする観点からアドバイスを行なっています。建物メンテナンス、設備のリニューアルのご相談がございましたら、お気軽にご相談ください。
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