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賃貸経営において適切に経費を使うことは、建物の長寿命化や美観維持に繋がります。その結果、ご入居者様に選ばれ続け、資産を長く守ることができます。このコラムを通して、賃貸経営における視野を広げていただき、経費の使い方を考えるきっかけになれば幸いです。

2025年8月18日、大阪府道頓堀の雑居ビルにて火災があり、消火にあたっていた消防隊員2名が亡くなりました。1階・2階が飲食店で、最上階の7階が高級民泊、途中階は倉庫として利用されていました。
出火原因は捜査中ですが、1階のエアコン室外機付近が火元とみられています。建物外壁の「看板(壁面広告)」をつたって隣のビルへ急速に燃え広がり、最終的には2棟・約100㎡規模が焼損しました。
焼損したビルでは、2023年の立入検査で「避難口表示の不備」・「避難訓練の未実施」・「火災報知器の未設置」など消防法令違反6項目が見つかり、うち4項目が未是正のままだったと報じられています。
今回は、消防法に基づく指導について、その内容でよくあるものやその対策についてお伝えします。
消防法に基づく指導に従わない場合
2001年に発生した新宿歌舞伎町の雑居ビル火災では、消防の指導に基づき改善しなかったことにより、負傷者3人・死亡44人の大惨事となりました。是正されていなかった例としては、以下のようなものが挙げられます。
- テナントの備品が通路に置いてあり、避難経路の確保されていない。
- 同上の理由により、防火扉が閉まらない。
- 報知器が古く、誤報が多かったことを理由に電源が切られていた。にもかかわらず、報知器の改修をしていなかった。
- 避難器具がない、または、あっても作動できるように整備されていない
この事件に火災について、裁判により、オーナー・ビル関係者に約9億円弱の支払い命令が出されました。「死亡している方の人数に比べて賠償額が少なすぎる」との意見もありました。この火災により消防法令が改正され、所有者の法的責任も大きくなりました。
冒頭で紹介した道頓堀火災の原因は未だ調査中ですが、是正勧告に従っていない所有者の責任を問われる可能性が高いと思われます。個人による命令違反の場合、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」などが科せられる可能性があります。法人による命令違反の場合は、先の規定に加えて最大1億円以下の罰金が科される可能性があります。
テナントビルでは、各テナントも防火管理者を選任しますが、出火元でない限り最終的な火事の責任は所有者となります。
防火管理者の選任
特定防火対象物(飲食店など不特定多数の出入りがある建物)…収容人員30人以上
非特定防火対象物(賃貸マンション、工場、事務所など特定の人の出入りがある建物)…収容人員50人以上
※例外的に、特定防火対象物で6項(ロ)に該当する避難困難者が入居する施設がある場合は、収容人数10人以上で選任が必要になります。
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報道された項目についての対応策
今回の火災で未是正だったと報じられた項目について、対応策をお伝えします。ご自身の物件について、気になる点はないか参考にしていただけますと幸いです。
1.避難口誘導灯の不備
蛍光灯切れや、内部のバッテリー不良により不点灯となっている誘導灯はありませんか?最近は、誘導灯もLED化されています。LEDへの交換は、電気代の節約にもなります。もし蛍光灯の誘導灯を利用されているなら、交換をおすすめします。
2.避難訓練の未実施
選任している防火管理者または所有者は、避難訓練を行い、管轄消防署に書類を提出しなくてはなりません。
訓練を計画して、実動訓練をするのが望ましいですが、東京消防庁が公開している「ネットで自衛消防訓練」を活用することもできます。実施前に管轄消防署に申請したり、動画の視聴後に消防設備や避難経路を確認したりすることで、東京消防庁管内では法定訓練として扱われます。
さらに、弊社管理物件では、消防設備点検時に、避難場所・動画による消火器の取り扱い・通報方法・避難器具の使用方法などの案内行っている物件もあります。避難場所については区のHPで確認できますが、知らないご入居者様も少なくないため、避難経路と併せて把握していただくとよいでしょう。
避難器具は、しばらく点検していないと、箱が錆びて穴が開き、ハシゴも使用できなくなっていることがあります。雨水が入りやすいベランダに置いてあるボックスは、コンクリートブロック等を用意して下に敷くと、雨水が滞留を防ぐことができ、長持ちします。避難器具に関連して、緩降機(かんこうき)がある場合、初見で問題なく使用することは難しいと思います。避難ハシゴは形状から何となく使い方が想像できますが、緩降機は緊急時に使用方法を読んで正しく使用できるか不安が残ります。弊社では、消防庁の動画を参考としてお渡しするか、消防点検時に使い方を説明しています。
3.火災報知器の未設置
テナントビルの場合、自動火災報知器に連動した室内の報知器がないことがあります。これはテナントビルだと起きやすいトラブルの1つで、テナントの入れ替えや、それに伴う内装工事や造作により発生することがあります。
間取りを変えたものの報知器の位置は昔のままという場合、未警戒の区域が出る可能性があります。また、間仕切りを追加すると防火区画が増えるため、報知器も追加しなくてはなりません。開業時は消防に届け出をするので、違反があれば指摘をもらえます。しかし、開業した後に使い勝手を考えて造作することで「知らないまま」違反になっているケースもあります。オーナーは、定期的な消防設備点検により是正項目を確認し、テナントへ指導をしたという履歴を取っておくことをおすすめします。
いかがいたしましょうか?消防点検は法的に実施が義務付けられており、「もしも」の時にご入居者様・大切な不動産を守るためにも不可欠なものです。今回は、いくつかの項目を例として紹介しましたが、もし、消防点検の際に指導があった項目があれば、迅速に対応することをおすすめします。
ミノラス不動産では、賃貸経営のコストコントロールのサポートとして、日常メンテナンスから長期的な修繕計画と実施の立案しています。また、キャッシュフローに与える影響についても、オーナー様の賃貸経営を良くする観点からアドバイスを行なっています。建物メンテナンス、設備のリニューアルのご相談がございましたら、お気軽にご相談ください。
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