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司法書士ゆかり事務所 司法書士 荻島一将

会社の唯一の代表取締役が、その株式を100%保有している、いわゆる「一人会社」において、その会社の代表取締役が亡くなると、その代表取締役個人の相続手続のほか、会社の承継手続も必要となってきます。
今回は、一人会社の社長に相続が発生した場合の会社の承継について、どのような手続が必要となるのか、簡単にご説明したいと思います。
一人会社の社長が死亡、会社はどうなる?
一人会社の社長には、会社の(代表)取締役としての地位のほか、会社のオーナー(株主)としての地位があります。一人会社の社長が亡くなると、会社にとって重要なこの二つの地位が不安定となり、会社存続に大きな影響を与えることになります。
まず、株主としての地位は、相続開始により株主の相続人が承継することになります。一方、会社の取締役としての地位は、一身専属権といって、相続人が当然承継することはできません。
つまり、一人会社の社長が亡くなると、その会社の株式に相続が発生すると同時に、会社運営を行う取締役がいなくなってしまうという状況が生じるのです。
また、一人会社の社長が亡くなっても、会社が自動的になくなることはありません。そのため、どなたかがその会社を承継して、会社運営を継続していくか、会社を清算し廃業するという手続を行う必要があります。
株式の承継方法
上述した通り、株式は相続財産です。株式の相続手続としては、まず遺言の有無を確認します。遺言があって、株式の取得について定められている場合は、その遺言に基づいた形で株式は承継されることになり、その承継者が当該会社の新オーナーとなります。
遺言がない場合は、株式は一旦、相続人全員の共有状態となるため、遺産分割協議を行い、株式の承継者を決める必要があります。非上場株式の評価については、税理士に依頼して算出してもらうことになります。株式を含む相続財産の全てが基礎控除を超える場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納付することが必要となりますので、早めに顧問税理士に相談するようにしましょう。
役員の選任
会社の取締役は、通常、株主総会で選任され、就任を承諾することによって初めて会社との間に委任関係が生じ、取締役としての地位を与えられます。
株式の相続人が決まったら、会社を存続させる場合も、会社をたたむ場合も、まずは株主総会を開催して役員を選任する必要があります。会社を存続させる場合には、新たに取締役を選任することになります。他方で、会社の事業を廃業する場合には、清算人という役員を選任し、会社の清算手続を進めることになります。
ところで、会社の役員に変更事由が生じたら、原則として2週間以内に、役員変更登記を申請することが法律上定められています。会社継続、廃業いずれの場合も、なるべく速やかに会社をどうするか決め、役員の選任をしてその登記をする必要があります。
会社の清算手続
会社の事業を廃業するためには、清算人という役員により、会社の解散及び清算手続をする必要があります。内容としては、会社解散・清算人選任の登記を行った後、税務署や都道府県税事務所、地区町村等の役所に解散届を提出し、会社の債権者に対して官報公告を行うことにより債権者保護手続を進め、残余財産を確定して株主に分配し、税務申告を行い、清算結了登記を申請し、登記を閉鎖する…等々、諸々の手続を行うことになります。
一人会社のオーナー様が亡くなると、かなり煩雑な手続が必要になるため、通常の相続と比較して格段に相続人の負担が増えます。また、運営中の会社であれば、その事業活動に多大な影響が生じ、事業が停滞してしまうおそれも高まります。一人会社のオーナー様としては、株式の相続や事業の承継について、生前に十分検討し対策しておくことが重要です。
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この記事の執筆者紹介

荻島一将
司法書士・行政書士ゆかり事務所 所属の荻島一将(おぎしま かずまさ)先生です。ミノラス不動産が毎月発行している不動産情報誌「Minotta」にて、相続対策や生前対策について、わかりやすく執筆・解説いただいています。