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役立つ不動産の市況や経営の情報をご紹介

予防保全を目的とした修繕計画を立てるには、まず現在の建物状況を正しく把握することが重要です。保全の目的や計画の基準となる資料については、過去のコラムで詳しく解説しています。
今月は、先月までの内容を踏まえ、10年ごとの経費の変遷と、収入に対する経費の割合の考え方をご紹介します。
10年ごとの収入と修繕費、収入に対する経費の割合
想定した物件の条件をもとに算出した結果、30年間で必要となる工事費の総額は約4,489万円でした。賃料年収については、満室経営できた1,056万円を100%とし、11年目からは95%、21年目からは90%に減少すると仮定して算出してみます。これらの情報をもとに、10年ごとの収入、10年間で必要な修繕費、収入に対する経費の割合を表1にまとめました。

1~10年目:貯蓄を意識する時期
- 収入・・・年収1,056万円×10年=1億560万円
- 1~10年目に必要な修繕費の合計・・・367万円
- 収入に対する経費の割合・・・367万円÷1億560万円×100=3.47%
この時期は「経営が順調で油断しやすい時期」とも言えます。修繕費の総額は約367万円、収入に対して約3.5%と比較的少なく、減価償却による節税効果も大きいため、現金が貯まりやすい時期です。
しかし、ここで散財や繰上返済をしすぎると、後の修繕資金に困ることになります。賃貸経営の本来の目的は、老後の安定や先祖代々の土地を守るため、子供や孫ためではないでしょうか?初心を忘れず、将来のための現金ストックを意識しましょう。
11~20年目:投資と維持のバランスが大切な時期
- 収入・・・年収1,056万円×95%×10年=1億30万円
- 11~20年目に必要な修繕費の合計・・・1,899万円
- 収入に対する経費の割合・・・1,899万円÷1億30万円×100=18.98%
この時期は「踏ん張りどころ」です。修繕費は約1,899万円、収入の約19%と急増します。築年数が経過して、エアコン・給湯器などの設備交換が必要になる時期であり、ご入居者様の入れ替わりに併せて原状回復費用も増えてくる頃です。さらに、屋上防水や廊下塗装など、支出が重なるタイミングでもあります。
この時期に必要なことは、トラブルが起きる前に投資する姿勢です。階段や廊下の錆、雨漏れなどを放置すると入居者満足度が下がり、退去や賃料下落につながります。また、近隣物件との競争にも勝つために、差別化や改善の取り組みを行いましょう。
「賃料を下げる」ということは、「建物の価値を下げる」ことでもあります。どうしても経費を捻出できない場合、家賃の値下げを検討することも必要かもしれません。しかし、家賃収入に対して経費の割合が高くなり、収益性が悪くなってしまいます。一時の状況で判断せず、専門家に相談することをおすすめします。
21~30年目:税負担と修繕が重なる「デッドクロス期」
- 収入・・・年収1,056万円×90%×10年=9,500万円
- 21~30年目に必要な修繕費の合計・・・2,223万円
- 収入に対する経費の割合・・・2,223万円÷9,500万円×100=23.40%
この時期は「所得税が高くなる」時期でもあります。修繕費は約2,223万円、収入の約23%と高額になり、減価償却が終了するため税負担が増えます。この“デッドクロス”を避けるには、以下のような方法があります。
- 金融機関に相談してローン期間を延長し、返済額を抑える
- 大規模修繕を行い、経費計上して負担を分散する
特に築20年以上では、タイル外壁などの補修も必要になるケースが多く、計画的に修繕費を使うことがポイントです。このタイミングで大規模修繕を実施して、経費を計上するために敢えて新たに借り入れをされる方も多いです。減価償却費が減った分を補うように、資産計上をして経費を使う考え方です。
30年間を通した収支バランスと資金確保の考え方
表1を参考に、30年間の収入とそれに対する経費の割合も見てみましょう。
- 30年間の収入の合計・・・3億90万円
- 30年間で必要な修繕費の合計・・・4,489万円
- 収入に対する経費の割合・・・4,489万円÷3億90万円×100=14.92%
つまり、収入に対して14.92%の修繕費を積み立てておくことで、長期的に安定した賃貸経営が可能となると言えます。では、10年ごとにどれくらい積み立てればいいのか、年額と月額も算出してみましょう。
〇1~10年目
- 10年間の収入 1億560万円×14.92%=約1,576万円
- 1年間で貯めるべき修繕費・・・1,576万円÷10年=年額 157.6万円
- 1か月で貯めるべき修繕費・・・157.6万円÷12か月=月額 約13.2万円
〇11~20年目
- 10年間の収入 1億30万円×14.92%=約1,496万円
- 1年間で貯めるべき修繕費・・・1,496万円÷10年=年額 149.6万円
- 1か月で貯めるべき修繕費・・・149.6万円÷12か月=月額 約12.5万円
〇21~30年目
- 10年間の収入 9,500万円×14.92%=約1,417万
- 1年間で貯めるべき修繕費・・・1,417万円÷10年=年額 141.7万円
- 1か月で貯めるべき修繕費・・・141.7万円÷12か月=月額 約11.8万円
収入が多く修繕が少ない前半は多めに、収入が減り修繕が多い後半は少なめに積み立てる計画です。おおよそこれくらいの積み立てを継続することで、30年間で必要な修繕費を無理なく確保できるでしょう。積立金制度のほか、満期型の保険商品や預貯金で備える方法も有効です。
いかがでしたでしょうか。大切な資産である賃貸不動産を、長く保つためには修繕は不可欠です。修繕が必要になった時、オーナー様が困らないように考えておくのが長期修繕計画なのです。どんな修繕が必要なのか、どれくらいのお金が掛かるのか、どれくらいのお金を貯めておけばよいのか。将来の支出を見据えて、早い段階から少しずつ積み立てておくことで、突発的な修繕や資金不足にも対応できます。長期修繕計画を立てると、今後の経営が見えていくということが伝わっていれば嬉しいです。
長期修繕計画は、「修繕するため」だけではなく、「安定した賃貸経営を続けるための未来設計」です。ミノラス不動産では、物件の状態や収支に合わせた修繕計画のご提案が可能です。簡易的な診断から長期的な資金計画まで、お気軽にご相談ください。
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