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2026.06.01 Minotta掲載記事 メンテナンス

消防点検について④~火災時に命を守る「避難器具」とは?~

 マンションやアパートなどの共同住宅では、火災時にご入居者様が安全に避難できるよう、さまざまな消防設備が設置されています。しかし、設備が設置されていても、その役割や特徴まで知っているオーナー様は意外と多くありません。

 前回は「自動火災報知設備」について解説しました。今回は、火災時の避難に欠かせない避難器具について解説します。避難器具は、万が一火災が発生した際に、安全な避難を支える重要な設備です。賃貸住宅を所有するオーナー様にとっても、どのような設備が設置されるのか、どのように維持管理すべきかを知っておくことは、建物の安全管理につながります。

 避難器具は、消防法や建築基準法に基づき、建物の構造や階数、収容人員などに応じて設置が義務付けられています。普段はあまり意識することのない設備ですが、万が一の際には人命を守る重要な役割を果たします。今回は、実際の建物でもよく見られる代表的な避難器具について、それぞれの特徴や設置されるケースを紹介します。

 目次

  1.避難器具の設置基準
   ―(1)設置義務が生じるケース
   ―(2)二方向避難の考え方

  2.代表的な避難器具
   ―(1)避難はしご
   ―(2)救助袋
   ―(3)避難ロープ
   ―(4)緩降機
   ―(5)避難ブリッジ
   ―(6)滑り棒
   ―(7)避難用タラップ
   ―(8)避難用滑り台

  3.維持管理と注意点

  4.まとめ

1.避難器具の設置基準

(1)設置義務が生じるケース

 マンションなどの共同住宅では、建物の用途や階数、収容人員に応じて避難器具の設置が必要になります。一般的には、2階から10階までが避難器具の設置対象です。1階は避難階となるため対象外であり、11階以上は避難器具による避難が現実的ではないため、特別避難階段や非常用エレベーターなどによる対応が基本となります。また、共同住宅(5項ロ)の場合、収容人員が30名以上になると設置義務が生じます。

 建物の規模や用途によって必要となる設備は異なるため、それぞれの建物に応じた設備計画が求められます。

(2)二方向避難の考え方

 マンションでは、「二方向避難」の考え方も重要です。例えば、階段が1つしかない建物では、火災によって避難経路が塞がれてしまう可能性があります。そのため、バルコニーに避難器具を設置し、別経路で避難できるようにするケースがあります。避難器具は、“万が一の際の第2の避難経路”として重要な役割を担っています。

 また、火災時には炎だけでなく煙が避難経路を塞ぐケースもあります。そのため、避難器具は「使う機会が少ない設備」ではなく、「万が一に備える設備」として適切な維持管理を行うことが大切です。

2.代表的な避難器具

(1)避難はしご
図1「避難はしご」

 避難器具の中でも、最も代表的な設備が「避難はしご」です。マンションのバルコニーなどに設置されることが多く、開閉式の避難ハッチを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

 避難はしごには、樹脂製や金属製などさまざまな種類があります。設置方法も固定式、吊り下げ式、ハッチ格納式などがあり、いずれも消防法の基準を満たす必要があります。

 近年では、収納スペースを取りにくい吊り下げ式やハッチ格納式が多く採用されています。ただし、種類によって使用方法が異なるため、実際の使い方を確認しておくことも大切です。

(2)救助袋
図2「救助袋」

 救助袋は、高層階から安全に避難するためのスライド型避難器具です。「垂直式」と「斜降式」の2種類があり、袋の内部を滑りながら地上へ避難する仕組みになっています。特に垂直式は、袋の内部がらせん状になっているため、一気に落下せず安全に降下できる構造です。

 一定の設置スペースが必要になるため、マンションよりも学校などで見かけることが多い避難器具です。

(3)避難ロープ
図3「避難ロープ」

 避難ロープは、マンションのバルコニーや窓から直接降下するための器具で、地上2階にのみ設置可能です。商品名では「ステップダン」と呼ばれることもあり、2階建てアパートなどで見かけるケースがあります。

 ロープを固定し、身体を滑らせながら降下する仕組みですが、使用には一定の腕力や技術が必要です。結び目によって急降下を防ぐ構造にはなっていますが、高齢者や子どもには使用が難しい場合もあります。

(4)緩降機
図4「緩降機」

 緩降機は、ロープと調速機を使用して避難する器具です。商品名では「オリロー」と呼ばれることもあります。

 避難ロープとの違いは、着用具や調速機が備わっている点です。降下速度を自動で調整しながら避難できるため、安全性が高い特徴があります。

 室内の壁面やバルコニー、共用廊下などに設置されることがあり、マンションでは2〜10階で多く採用されています。近年は、一人用タイプの設置が一般的です。

(5)避難ブリッジ
図5「避難ブリッジ」

 避難ブリッジは、隣接する建物へ避難するための設備です。マンション同士を橋のようにつなぎ、火災時などに別棟へ避難できるようにします。

 ただし、隣接建物との高さを合わせる必要があるほか、所有者の調整も必要になるため、一般的な設備ではありません。学校や公共施設など、隣接建物との連携がしやすい建物で見られるケースがあります。

(6)滑り棒
図6「滑り棒」

 滑り棒は、垂直方向へ素早く避難するための設備です。消防署の訓練施設などで見たことがある方も多いかもしれません。

 棒を両手で握りながら滑り降りることで短時間で避難できますが、腕力が必要で、降下速度も速くなりやすいため、高齢者や子どもには扱いが難しい避難器具です。主に2階部分に設置されます。

(7)避難用タラップ
図7「避難用タラップ」

 避難用タラップは、金属製の階段やはしごのような形状をした避難器具です。マンションのバルコニーなどに設置されることが多く、地下階や2〜3階部分で採用されるケースがあります。

 手すり付きの構造も多く、避難ロープや滑り棒と比較すると、高齢者や子どもでも比較的使用しやすい点が特徴です。

(8)避難用滑り台
図8「避難用滑り台」

 避難用滑り台は、バルコニーや窓から安全に地上へ避難するための設備です。遊具の滑り台とは異なり、耐火性や安全性を考慮した構造になっています。

 病院や高齢者施設などで採用されることが多く、子どもから高齢者まで比較的利用しやすい点が特徴です。マンションでは、2〜10階で設置されるケースがあります。

3.自動火災報知設備について

  マンションでは、各住戸の住宅用火災報知器設置に加えて、延べ床面積500㎡以上の建物には自動火災報知設備の設置が義務付けられています。この設備は、感知器・発信機・受信機で構成され、火災を検知すると建物全体に警報を発する仕組みです。

 建物内だけでなく、非常ベルによって周囲にも異常を知らせる役割を持ちます。契約内容によっては警備会社と連動している場合もあり、より迅速な対応が可能となっています。

 また、高さ31mを超える建物(11階建て以上のタワーマンション)では、スプリンクラー設備や避難設備の設置が義務付けられており、インターホンと連動して各住戸へ通知される仕組みとなっています。

3.維持管理と注意点

 避難器具は、設置して終わりではありません。消防法では、6ヶ月ごとの機器点検と、年1回の総合点検が義務付けられています。点検では、避難器具本体だけでなく、実際に避難できる状態が維持されているかどうかも確認します。

 また、避難ハッチの上や降下空間に室外機や植木鉢、荷物などを置いてしまうと、緊急時の避難を妨げる恐れがあります。これらは消防法違反となる可能性もあるため注意が必要です。

 消防法上の避難器具は全部で8種類あり、設置基準は建物用途や収容人員、階数などによって細かく定められています。実際には、建築基準法との兼ね合いや設置緩和基準なども関係するため、判断が難しいケースも少なくありません。そのため、避難器具の設置や維持管理については、消防設備士や消防設備点検の専門業者へ相談することが重要です。


 避難器具は、普段使用する機会が少ない設備ですが、火災などの緊急時にはご入居者様の命を守る重要な役割を果たします。適切に設置されていても、点検が行われていなかったり、避難経路が荷物などで塞がれていたりすると、本来の役割を十分に果たせない可能性があります。

 建物を安全に維持していくためにも、避難器具の設置状況や維持管理について、定期的に確認することが大切です。

 ミノラス不動産では、「大規模修繕・メンテナンス勉強会」を開催しています。消防設備をはじめ、建物を安全に維持するためのメンテナンスや修繕について、実際の事例を交えながら分かりやすくご紹介しています。建物の維持管理についてお悩みのオーナー様は、ぜひお気軽にご参加ください。

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