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大切な資産を「守る」「つなぐ」「増やす」ために
役立つ不動産の市況や経営の情報をご紹介
ミノラスホープ株式会社 税理士 岡田 祐介

1.改正の方向性~実勢価格への接近が明確に~
今回の改正では、相続税・贈与税における資産評価を、より実勢価格に近づける方向性が明確に打ち出された点が一番のトピックと言えるでしょう。
従来、不動産は路線価等による評価と市場価格との間に乖離が生じやすく、その差を活用した相続対策が広く行われてきました。しかし近年、この乖離を問題視する動きが強まり、今回の税制改正大綱もその流れを色濃く反映しています。
本コラムでは、現時点で示されている改正の方向性を踏まえ、不動産オーナー様が今後どのような視点で資産戦略を考えるべきかを整理します。
2.貸付用不動産の評価見直しと制度の趣旨
税制改正大綱では、貸付用不動産について、取得後5年以内に相続または贈与が発生した場合を中心に、従来の評価方法を見直す方針が示されています。
具体的には、相続や贈与の直前に取得された不動産について、路線価等による評価が実勢価格と大きく乖離し、課税の公平性を損なうケースがあることを踏まえ、取得価額や時価を基準とした評価を基本とする方向性が打ち出されています。
一方で、大綱では一律に時価評価とするのではなく、課税上の弊害がないと認められる場合には、一定の評価減を認める考え方も示されています。具体的には、取得価額等を基準としつつ、概ね20%程度の評価減を行うことが検討されているとされています。
この点からも、制度の趣旨は不動産投資そのものを否定するものではなく、相続税・贈与税の負担軽減のみを目的とした短期的な取得を抑制することにあると読み取れます。
なお、これらの見直しは、令和9年1月1日以後に発生する相続および贈与から適用される予定です。現時点では大綱段階であり、具体的な適用要件や判定基準については、今後の法案および通達等で明らかになる見込みです。
不動産オーナー様が今後意識すべき視点
複数物件を保有する不動産オーナーにとっては、相続直前の取得や資産組み替えによる評価圧縮効果が限定される可能性がある一方で、長期保有を前提とした事業性のある不動産については、一定の評価調整が認められる余地も残されています。今後は、取得時期や保有目的を含めた全体設計が、これまで以上に重要になるといえるでしょう。
今回の改正は、「不動産を持てば評価が下がる」という従来の前提を見直す契機となります。今後は、短期的な評価減を狙った取得や相続直前の資産組み替えといった戦略よりも、長期的な収益性・承継のしやすさ・資産全体のバランスを重視した設計が重要になります。
また、税制改正大綱はあくまで「方向性」を示したものであり、実務に直結する詳細は今後の法制化や通達に委ねられています。現時点で特に注視すべき論点としては、次の点が挙げられます。
- 貸家の評価減(借家権割合・貸家建付地評価)が、従来どおり適用されるのか
- 「取得価額」や「時価」の具体的な算定方法
- 相続税だけでなく、贈与税や法人所有不動産へどの範囲まで影響するのか
制度が確定するまで動きを止めるのではなく、複数のシナリオを想定しながら、柔軟に対応できる準備を進めることが重要です。
令和8年度税制改正大綱は、不動産を活用した相続・資産承継の考え方に、大きな転換を促す内容となっています。
特に、取得後5年以内の貸付用不動産を中心に評価方法の見直しが検討されている点は、複数物件を保有するオーナーにとって見過ごせないポイントです。もっとも、今回の見直しは、不動産投資そのものを否定するものではなく、課税上の弊害がないと認められる場合には、一定程度(概ね20%)の評価調整を行う考え方も示されています。このことからも、制度の趣旨は短期的・形式的な節税スキームを抑制しつつ、事業性を伴う不動産保有については一定の配慮を残す点にあるといえるでしょう。
現時点では、具体的な適用要件や判定基準、貸家の評価減の取扱いなど、実務に直結する部分の多くは今後の法制化や通達に委ねられています。そのため、早急な結論を出すのではなく、制度の確定状況を注視しながら、複数のシナリオを想定した準備を進めることが重要です。
改正に止めることはできませんが、詳細が明らかになっていくこの期間を、これまでの相続対策を一度立ち止まって見直すよい機会と捉えることで、気持ちの面でも少し整理しやすくなるのではないでしょうか。
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この記事の執筆者紹介
岡田 祐介
ミノラスホープ株式会社 所属・税理士の岡田 祐介(おかだ ゆうすけ)先生です。ミノラス不動産が毎月発行している不動産情報誌「Minotta」にて、相続における税金について、わかりやすく執筆・解説いただいています。

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