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ミノラスホープ株式会社 税理士 岡田 祐介

不動産価格の上昇、築古物件の老朽化、エリア再編の進展などを背景に、事業用不動産の「売却」だけでなく「組み換え(買換え)」を検討するオーナー様が増えています。その際に重要となる税制が、事業用資産の買換え特例(租税特別措置法第37条等)です。
令和5年度税制改正では管理要件が厳格化され、さらに令和8年度税制改正大綱では制度趣旨の明確化が示されています。
この記事では、資産戦略の視点から、事業用資産の買換え特例の改正と今後の活用ポイントを整理していきます。
1.制度の概要と基本的な仕組み
事業用資産の買換え特例とは、一定の事業用資産を譲渡し、一定期間内に別の事業用資産へ買い換えた場合に、譲渡益の一部について課税を繰り延べる制度です。計算式は次のとおりです。
譲渡益 × 繰延割合(原則80%等)= 繰延額
ここで重要なのは、「繰延」であって「免税」ではないという点です。買換資産の取得価額は圧縮されるため、将来売却時にその分の課税が顕在化します。したがって、本制度は一時的な節税策ではなく、中長期的な資産戦略の中で活用すべき制度といえます。
特に長期保有不動産に多額の含み益がある場合には、活用余地を検討する価値があります。
2.令和5年度改正のポイント
直近では令和5年度に税制改正が行われました。その変遷を踏まえてポイントを解説していきます。
令和5年度改正では、適用期限の延長(令和8年3月末まで)とともに、届出要件の明確化が行われました。 どの譲渡資産とどの買換資産を対応させるのかを申告段階で確定させるなど、実務管理の精度が強く求められる内容となっています。
また繰延割合についても、表の赤字部分のとおり改正が行われました。
| 譲渡資産 | 買い替え資産 | 繰延割合 |
|---|---|---|
| 下記以外 | 下記以外 | 80% |
| 東京都特別区 | 集中地域以外への本店等の移転 | 80% → 90% |
| 集中地域以外 | 東京都特別区への本店等の移転 | 70% → 60% |
| 同上 | 東京都特別区 | 70% |
| 同上 | 東京都特別区以外の集中地域 | 75% |
買換資産の欄に「本店等の移転」とありますが、法人税においても同様の特例があります。アフターコロナにおける経済社会活動の回復、不動産市場の活性化を狙って都市部から地方への移転を進める意図があると考えられます。
個人の場合、4号買換えの改正による直接的な影響は大きくない可能性があります。しかし、資産管理会社を保有している場合は、本店等の移転も含めて検討する余地があるでしょう。
3.令和8年度改正大綱の方向性
令和8年度税制改正大綱では、適用期限を令和12年末まで再延長する方針が示される一方で、買換資産の用途制限や対象資産の整理も提示されています。単なる含み益の繰延ではなく、実質的な事業再編であることを重視する方向性が明確になっています。
◇資産の用途制限
長期保有(10年超)の土地・建物等からの買換えについては、買換資産に用途制限が設けられる方向です。
- 建物・附属設備・・・特定施設用に限る
- 構築物・・・その特定施設の事業遂行上必要なものに限る(特定施設=事務所・工場・店舗等)
用途が明確な事業用不動産に限定することで、制度趣旨に沿った活用を促す狙いとされています。
◇繰延割合や対象区域等の調整
航空機騒音障害区域の取扱いや、再開発事業に伴う買換えの繰延割合など、個別ルールの調整も予定されています。従来制度と比較すると、要件はより精緻化されています。
令和5年改正を「管理の厳格化」、令和8年改正案を「制度趣旨の明確化」と整理すると、延長はされるものの、活用の自由度は徐々に限定されていることが分かります。
だからこそ今、長期保有資産の含み益の状況、将来売却時の税負担、相続との関係、法人化との組み合わせなどを総合的に再点検する意義があります。
特に底地や事業用不動産を長期にわたり保有している場合、単純な売却か保有継続かという二択ではなく、「組み換え」という第三の選択肢を持つことは、資産承継の設計にも影響を与えます。
事業用資産の買換え特例は、中長期の資産戦略の一部として活用すべき制度です。単なる節税策ではなく、相続対策や財務戦略まで視野に入れた検討が求められます。
税制改正の動向を受け身で捉えるのではなく、今後の資産戦略を見直す契機として活用することが重要ではないでしょうか。
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この記事の執筆者紹介
岡田 祐介
ミノラスホープ株式会社 所属・税理士の岡田 祐介(おかだ ゆうすけ)先生です。ミノラス不動産が毎月発行している不動産情報誌「Minotta」にて、相続における税金について、わかりやすく執筆・解説いただいています。

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