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2023.05.08

おひとりさまの遺産相続について

おひとりさまという言葉をよく聞くようになり、おひとりさま用のプランが飲食店などでも出てくるようになってきました。

国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集において50歳まで一度も結婚していない人の割合を示す「五十歳時未婚率(生涯未婚率)」は1985年まで男女とも5%に達していませんでしたが、2020年には男性が28.25%、女性が17.81%まで上昇しています。
これは男性の4人に1人以上、女性の6人に1人以上が望むと望まざるとにかかわらず、「結婚しない人生」を歩んでいることになり、令和時代には、こうした“おひとりさま”の相続が増えてくるのではないでしょうか。
そこで今回は、おひとりさまの相続について解説します。

おひとりさまの人が遺言書などを遺さず亡くなった場合

おひとりさまの人が遺言書などを遺さず亡くなった場合、直系尊属(親や祖父母)が遺産を相続することとなり、直系尊属が既に他界している場合には兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹が法定相続人となる場合で、兄弟姉妹が他界しているときは、その1世代下である甥や姪が法定相続人となります。
ただし、このような代襲相続は兄弟姉妹の場合には1代までであり、甥姪も他界していると法定相続人にはなりません。

直系尊属(親や祖父母)も兄弟姉妹もいない場合にはどうなる?

それでは直系尊属(親や祖父母)も兄弟姉妹もいない場合にはどうなるのでしょうか。
その場合は、利害関係者や検察官からの申立てにより相続財産管理人が選定され、

①債権者 → ②特定受遺者 → ③特別縁故者 → ④財産共有者 → ⑤国庫

いう順位で清算・分配をすることとなります。

⑤の国庫というのはお聞きになったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、①~④の該当者もない場合や清算・分配後に余りがある場合には最終的に財産は国のものになるということです。

②の特定受遺者とは遺言で財産を受け取る人のことを指します。
もめない相続をするために遺言を使うことは有用ですが、法定相続人がいないおひとりさまにおいてもなにもしないと国に財産を召し上げられてしまうため、事実婚のパートナーや友人、慈善団体など法定相続人になりえない方々に財産を承継してもらいたい場合に有効といえます。

相続税額の2割加算に注意

ただし、その場合に注意いただきたいのが「相続税額の2割加算」という制度になります。
これは相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、配偶者、父母、子供でない場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されるというものです。
具体的には、①兄弟姉妹、②甥姪、③祖父母、④代襲相続人でない孫、⑤孫養子、⑥この配偶者や内縁の妻などの相続人でない第三者、⑦特別縁故者が挙げられます。

これらの方々に遺言により財産を受け取ってもらうことを考える場合には相続税額の2割増しということを考慮して譲り渡す財産を考える必要があります。
特に不動産などすぐに現金化できないものを渡す場合には併せて現預金や換金がしやすいものも含めて考えるとよいでしょう。

相続対策としての生命保険金について

なお、現預金を直接渡すのではなく、相続対策としてよくでてくる生命保険金の受取人にすることをお考えになる方もいらっしゃるかと思います。
生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があることはニュースや雑誌などの媒体でも広く知られています。
しかし受取人が今回のような相続人以外の場合には適用されないこととなるため注意が必要です。

一人で生きていくことも選択することができる時代となってきていますが、税法の基本的な考え方は過去の家社会であることが多く、時代と法律がそぐわない不均衡な時代ともいえます。
その中でせっかく築いてきた財産をご自身の意思と異なる承継がされてしまうことを防ぐためにも、おひとりさまであっても戸籍謄本を取得し、誰に財産が承継されるのかを確認しておくことも必要ではないかと思います。

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