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修繕 注目!外壁 仕上げ編
3回に渡って、外壁の修繕についてお伝えしています。初回の「修繕 注目!外壁 確認編」では、外壁の現状確認について、前回の「修繕 注目!外壁 施工編」では、施工内容について外壁のタイプごとに詳しく記載しました。
前回にも記載したように、外壁の修繕では、①洗浄 ②補修 ③塗装の順に作業を進めていきます。今回は仕上げ編として、③塗装についてコスト面も含めてまとめていきます。
6種類の塗料
塗料は、含まれる樹脂の成分によって大きく下の表の6種類に分類されます。塗料の種類によって、性能・単価・耐久性・メリット・デメリットは異なります。
種類 | 対応年数 | 単価 | 素材 | |
ウレタン塗料 | 5~7年 | 1,300~1,600円/㎡ | ウレタン樹脂 | 外壁にあまり使われない |
アクリル塗料 | 8~10年 | 1,700~2,200円/㎡ | アクリル樹脂 | よく使われる |
シリコン塗料 | 10~15年 | 2,000~3,000円/㎡ | シリコン樹脂 | よく使われる |
ラジカル塗料 | 12~15年 | 2,500~3,500円/㎡ | 高耐候酸化チタン | オススメされた場合 |
フッ素塗料 | 15~20年 | 4,000~5,000円/㎡ | フッ素樹脂 | あまり使われない |
光触媒塗料 | 15~20年 | 上記の塗料にプラス 1,000~1,500円/㎡ | 酸化チタン | あまり使われない |
ウレタン塗料
メリット
塗装自体に柔らかさが有るのでひび割れがしにくい。コストが良い。
デメリット
耐久性が乏しく、劣化しやすい。粘度が高いため、外壁に使用すると垂れるため不向き。
以前は建物の外壁、屋根にも多く使用されていました。平面の屋上などは塗装がしやすい塗料です。しかし、デメリットに挙げたように垂れてしまうだけでなく、外壁面をウレタン塗料で施工するには足場を組む必要もあり、費用が掛かります。対応年数も長くはないため、外壁の塗料としては不向きと言えます。
アクリル塗料
メリット
種類が豊富で、色の再現性が非常に高い。硬化剤混ぜる必要が無く、施工性に優れている。
デメリット
耐候性が低い。塗膜が硬く、下地の動きによってヒビが入ることがある。
シリコン塗料と並んで、現在主流となっている塗料です。
シリコン塗料
メリット
種類が豊富。シンナーを使用しない溶剤の水性も高品質な製品が増えている。⇒匂いが比較的押さえられる。
デメリット
耐久性・耐候性が低い
シリコン塗料は、現在の外壁塗装では主流となっています。そのため、大量生産されて安く入手できます。現在、最も汎用性が高いのは、アクリルとシリコンの混合のアクリル系シリコン塗料です。近頃では、アクリル系・シリコン系・混合の3パターンのいずれかが、多くの外壁で使用されています。
ラジカル塗料
メリット
フッ素塗装と比べて、性能が高くコストが安価。
デメリット
白系の顔料に混入するため、濃い色の外壁には対応できない。
アクリル系の弱点である、対候性、対紫外線を補うためにラジカル塗料が開発されました。木造の建物、住宅メーカーの建物でサイディング仕上げの建物にはお勧めします。初回の確認編でご紹介した、チョーキング現象と呼ばれる白い粉を吹く現象を起こしている物件・起きやすい物件で使用すると効果的だからです。
ラジカル塗料は、チョーキングの発生を抑制する高対候酸化チタンと「光安定剤」を含んでいます。チョーキング現象は、紫外線により白系の顔料に含まれる酸化チタンが反応することで起きます。塗膜自体が粉になって出てきているので、塗装本来の防水性・耐候性などが著しく下がってしまうのです。そして、これらの機能が下がることで、さらなる劣化を招くという悪循環となってしまいます。
余談ですが、黒い色、濃い色の外壁ではチョーキングがそもそも起きにくいそうです。ただ、そういった濃い系の外壁でチョーキング現象が発生しているとするなら、完全に劣化していると判断されても良いと思います。しかし、販売されてから2022年時点で約10年と短く、事例が少ないため、性能の実績はまだ判断がつかない点もあります。もし、職人さんや業者さんからラジカル塗装を勧められたら、紫外線が強い立地・外壁色が白系といった理由でチョーキング現象が発生しやすいと判断していると思われるため、採用しても良いと思います。
フッ素塗料
メリット
耐候性が高い。撥水性が高く藻やカビが付着しにくい。耐薬性が高く酸性雨に強い。光沢の保持率が高い。対応年数が長い。
デメリット
塗料の単価が高い・効果性が高い状態で再度塗装する場合、新しい塗料が定着しにくく定着材(シーラー)を塗布する必要性がある。塗膜事態が固いのでひび割れする可能性が高い。艶消し等のマット仕上げが対応できない。
フッ素は私たちの身の回りで多く活躍しています。例えば、フライパンなどには、低摩擦特性・非粘着性などに注目して「テフロン加工」として利用されています。さらに、虫歯の発生を防ぐと歯磨き粉にも「フッ素配合」などと表記され販売されています。
外壁に適した性能も多く持っています。フッ素樹脂はポリマー性の物質で、熱や化学薬品、日光に強いという特性を持っているため、外壁の塗装に適していると言えます。外壁がALCの建物(住宅メーカー系)に多く採用されています。現状ではまだ塗料自体が高額なので、長期間のサイクルで修繕考える場合に採用されています。例えば、足場設置が高額になりそうな建物や立地等の物件などが該当します。具体的には、都心部の高層マンションや公共施設などです。
現在主流で使われているシリコン樹脂塗料も、発売当初は非常に高額でした。後に、企業努力やシェアの拡大により、価格が下がっていったという経緯があります。そのため、将来的にフッ素樹脂塗料のコストも下がる可能性が十分に考えられるでしょう。
光触媒塗料
メリット
耐久性が高い。太陽光を受け雨水が当たる環境であれば、ある程度の汚れなら雨水が流してくれる。
デメリット
他の塗装の上からのコーティングのためコストが掛かる。太陽光や雨が当たらないと汚れが落ちない。
触媒とは、そのもの自身は変化せず、他の物質の反応を促す物質のことを言います。そして、光(紫外線)を受けることで、他の物質に対して触媒作用が働くものを「光触媒」といいます。その中でも、圧倒的に高い光触媒作用を発揮するのが「酸化チタン(TiO2)」です。酸化チタンは、光が当たることによって触媒作用を発揮して、さまざまな分子の結合を分解するという性質があります。
光触媒コーティングは、この酸化チタンを液化させて、塗膜の表面に塗装する施工方法です。そこへ光が当たると、触媒作用がはたらき、汚れなどを分解してくれます。経口摂取しても人体への影響がほとんどありません。市販されている製品に関しても、経口摂取による急性毒性試験、皮膚への刺激性試験、変異原性試験などの各項目で安全基準を満たしていることが確認されています。そのため、内装でも使用でき、居住空間での空気清浄機能を発揮できます。空気中に存在するさまざまな雑菌やウイルスが、酸化チタンの光触媒作用により不活性化します。消臭性が高いのでペット飼育物件などで使用している例もあります。
太陽によく当たる場所は美観を維持できる一方、日陰になる箇所の汚れが目立ってしまう恐れもあります。また、鳥のフンや樹液など、ひどい汚れは落としきることは不可能です。加えて、サビや土埃といった無機質な汚れもセルフクリーニング効果の対象外となります。光触媒塗料は塗膜が固くなりやすい傾向にあるため、シーリングの収縮によってひび割れを起こす恐れがあります。
ここまでにご紹介した他の塗装をした後、最後にその上からクリアの光触媒でコーティングすることになります。そのため、コストととしては高くなり、表に記したように各塗装に1,000~1,500円上乗せされると考えていただければいいでしょう。
しかし、1番日光が当たるはずの屋根用の光触媒がないことや、ラジカル塗料同様に、販売されてからの年月がまだ短く事例が少ないため、性能の実績は判断が付きにくい側面があります。現場での施工にもよりますが、ある程度の効果性が発揮できていないのかもしれません。
まとめ
3回に渡って、外壁に注目してお伝えしてきました。賃貸経営を行う上で、コストは抑えられた方が良いです。しかし、建物を長く維持していくために必要な屋上・屋根・外壁の塗り替えには、コストがかかってしまうものです。とはいえ、素材と使用する塗料によっては長期間維持できるものもあれば、数年に一回は塗り替えが必要なものもあります。例えば、フッ素塗装に光触媒を組み合わせたものであればコストは高いですが20年手間いらずになります。一方で、アクリル塗装であればその間に2回塗り替えなければいけない可能性があります。
賃貸経営をしていく上で、「この後何年維持させていきたいのか」「その期間にどれだけの修繕が必要なのか」を考え、その為にコストがどれ位かかるのか、理解した上で修繕方法を考えてみてはいかがでしょうか?
ご自身の賃貸経営方針を明確にし、長期修繕計画を立てながら建物別に長期的な対策を考え、必要な経費のコストコントロールをおこない、修繕計画を計画通りに実行することが大切です。かかる費用と入る収入のキャッシュフローを確認しながら手残り資産をどれだけ多く産み出せるかが経営者として失敗しない賃貸経営ではないでしょうか。
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