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2022.09.02

よくあるご質問から考える大規模修繕

 ミノラスでは、様々な分野ごとにオーナー様向けの勉強会を実施しています。その中で、今まで以上にオーナー様から多くのご質問・ご相談を受けています。今回は、そんなオーナー様からいただいたご質問・ご相談を基に、大規模修繕の基本的な考え方をお伝えします。

大規模修繕の基本的な考え方

 大規模修繕について重要なポイントは、悪い箇所を修復するだけではなく、建物価値を「高める」ことも同時に行うことが大切です。

 下の図1「大規模修繕の基本的な考え方」は、国土交通省が出している「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」一部で、縦軸が建物性能・横軸が経年(時間軸)です。
 赤線が新築時の建物性能を表しており、年数経過に伴い、劣化した部分を上向きの矢印(修繕)で、再び新築時に近い性能に持ち戻しています。しかし、時代変化とともに社会的に要求される性能レベルが高くなっている(図の青線)ため、修繕だけでは黄色のレベルに届きません。大規模修繕を行う際は、この点に注意し、修繕+改良(リノベーション)を実施する必要があります。

図1「大規模修繕の基本的な考え方」

よくあるご質問1「この工事の金額は正しい?この工事費は高い?安い?」

 こういった疑問をお持ちのオーナー様の状況は、大きく分けて2つです。「物件でトラブルが発生し、工事を控えている場合」と「大規模修繕について詳しく知らない、情報不足の場合」です。

1:物件でトラブルが発生し、工事を控えている場合
 トラブルが起きてから工事をすると、必要な工事内容がかさむことが多いです。たとえば、ご入居中のお部屋で水漏れが起きたとします。その場合、給排水管だけでなく、室内清掃や内装工事が追加になります。さらに、工事期間の仮住まいが必要な場合はホテル等の手配も必要です。こうなると、オーナー様だけでなくご入居者様にとっても負担となります。建物の火災保険の利用も可能かもしれませんが、トラブルが多発する場合には、後々の保険契約の更新時に金額が上がることが考えられます。

◆2:大規模修繕について詳しく知らない、情報不足の場合
 実際にかかる費用を事前に分かっていればイメージも持ちやすいでしょう。「防水工事は〇〇円くらい」等の概ねの費用を事前に把握しておくだけでも、今後の値上がり傾向の社会情勢でも理解度で違うと思います。

1つ目のような事態を防ぎ、大規模修繕について理解を深めるには、長期修繕計画の作成がオススメです。「適切なタイミングに、適切な修繕を実施する。」この考え方は大規模修繕の基本です。どの部分に・いつ頃・どのような工事を・いくら掛けてやるのか…こうした計画を立てることで、トラブルによる余計な工事を防ぎ、費用の目安や知識を蓄えられます。

よくあるご質問2「いつ、どんなタイミングで、何をしたらよいのか?」

 こういったご質問には「建ててから20年以上経過していて今まで何もしていないようでしたら、迷わずに今でしょう」とお伝えしています。オーナー様にお話を聞くと、皆さん「いつかはやらなければいけない、必要なこと」と認識はされています。しかし、「安い買い物ではないし、どうしよう…」と考えているうちに、トラブルが発生してしまっているような気がします。
 オーナー様からお話を伺う中で「ご自身の考え方が整理できておらず判断が付かないのかもしれない」と感じることがあります。そんな時には、私からもオーナー様へ「この建物をどうしたいですか?」「この建物、あと何年持たせたいですか?」と、ご質問させていただいています。すると、多くの方々は、おぼろげながらにもどうしたいのか考えていらっしゃいます。

 数々の事例より、オーナー様の考えを整理する際に上手くいった方法をご紹介します。「建物所有者として、賃貸業の経営者として、どういう状態が理想的なのか?」と、ゴールから考えてみたらいかがでしょう。では、考えを整理する流れをご説明します。

◆ステップ1:ゴール設定
 先に述べた通り、まずはゴールを考えてみましょう。オーナー様によって、状況や考え方が異なります。たとえば、「先祖代々の土地なので守っていかなければならない」「鉄筋コンクリートで作っているので50年は家賃が下がらないように手を加え続けて収入を維持したい」と考えている方と、「自宅から遠いため、何かの時には処分したい」と考えている方では打つ手は異なります。次の世代に、どのように繋いでいくのかを基に考えてみていただければ良いでしょう。

◆ステップ2:具体的な計画・戦略を建てる
 具体的なゴールが見えてきたら、達成するために必要な計画を考えます。計画を立てる上では、予算の把握と、あわせて資金の準備・計画も必要となります。できるだけ具体的な判断材料が多くあると計画を立てやすくなります。判断材料としては、工事見積りや施工会社の確認、保証期間等々が挙げられます。工事見積りは、2~3社もらっておくこともポイントです。

◆ステップ3:問題点の把握
 建物の立地や環境、建物の構造・形状や向きによって風雨や日照の影響により、建物の劣化状況は違います。現状の劣化状況を確認し、どこまで直すべきか?①で考えてみたゴール設定による修繕計画を作成してみましょう。

◆ステップ4:実際の修繕計画と比較する
 ステップ3で把握した問題点・問題の箇所について最終的な見積りを取りましょう。問題を把握した上で取得する見積書は、ステップ2で判断材料として準備した見積書と比べると、色々な差が生まれていることでしょう。併せて、どこまで工事をするべきか、施工方法と工期についても確認が必要です。具体的に計画を立てていく中で、工事の中には一緒に実行することで効果が出る場合 もあるかもしれません。中にはさらに劣化が見つかることもあります。

◆ステップ5:最終的な予算の把握
 長期修繕計画を作成しているオーナー様は、長期修繕計画と併せて予算を確認してみましょう。新築時から現在、そしてその先までの計画が建物の構造、規模、面積から目安となる時期にやるべき工事内容と金額が記載されています。この修繕計画案を基準にして「①で考えられたゴール、②で検討した方法、③で確認した現状の問題点、④で集めた具体的な費用」を一様に見ることで、ご自身の考えが整理できるかと思います。なお、長期修繕計画について、作成していないというオーナー様が多いことも事実です。これをきっかけに長期修繕計画の作成をお勧めいたします。

 いかがでしたでしょうか。よくあるお悩みも、具体的にどういったところに困っているのかを分析していけば、解決への糸口につながることもあります。また、悩んでいるままだと時間だけが過ぎてしまい、修繕の前にトラブルが起きてしまうこともあります。小さなお悩みであっても、少し気になるということも、ぜひ一度専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。

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