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確定申告に向けて修繕費と減価償却費の確認2
早いもので、2022年も12月を迎え、師走も目と鼻の先になりました。あっという間に確定申告の季節がやってきます。そこで、前回と今回の2回に分けて経費の見直しについて取り上げています。
前回の「確定申告に向けて修繕費と減価償却費の確認1」では、賃貸経営における修繕費と資本的支出を判断するポイントについてお伝えしました。昨年度の確定申告書での減価償却費の確認・今年建物に対して掛けた費用の書類(領収書、請求書、振込の控え)の収集はしていただけたでしょうか。今回は、事例をもとに修繕費と減価償却費の確認をしていきます。
修繕費と資本的支出の違いを事例で確認
修理・改良等がどのようなケースで修繕費もしくは資本的支出になるのでしょうか?具体的な事例をいくつかご紹介します。ご自身が今年建物に掛けた費用はどちらに該当するのか確認してみましょう。
①建物内の蛍光灯の取替費用の場合
修理内容 :事務所の蛍光灯の全部を蛍光灯型LEDランプへ取り替え(特別な照明設備の工事なし)
費用内訳 :ランプ代+取付工事費=110万円
☑point
蛍光灯から蛍光灯型LEDランプへの取り替えで、節電効果や使用可能期間などの向上、その固定資産の価値の向上又はその耐久性の増大が認められます。しかし、蛍光灯等は建物の付属設備である照明設備の一部品となるため、部品の性能が向上しても建物付属設備自体の価値までが向上したとは考えられず、修繕費に該当します。
② アパートの壁紙の張替費用の場合
修理内容 :原状回復のための壁紙の貼り替え(以前と同等品質の壁紙)
費用内訳 :壁紙の張替費用200万円
☑point
建物の通常の維持管理、または、原状回復のための壁紙の貼り替えと判断できるため、修繕費に該当します。
③ 建物の屋根全体をスレート瓦で葺き替える工事費用の場合
修理内容 :屋根の20箇所以上から雨漏り。対策として屋根全体の瓦の葺き替え工事
(毎月、水漏れの防止用シリコンにより修理していた)
費用内訳 :スレート瓦を葺き替える工事費用800万円
☑point
屋根全体の瓦を葺き替える工事は、屋根の耐用年数を延長させる工事です。また、単に雨漏りの箇所だけを修理する応急的な修復工事ではないため、建物の使用可能期間を延長させるものとして資本的支出に該当します。
④マンションのシステムキッチン等の取替工事にかかる費用
修理内容 :マンションの一部の住宅内の台所および浴室の各設備等から
新たなシステムキッチン及びユニットバスへの取替え
費用内訳 :台所・浴室の取り替えと新設の費用約300万円
☑point
既存の台所・浴室の設備の一部が補修・交換されたのではなく、建物の各住宅内で物理的・機能的に一体不可分の関係にある台所・浴室に関して既存の各設備等が取り壊され、新しい台所・浴室が新設されました。各住宅を構成していた一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に実施されたと解釈されるため、各取替費用は修繕費には該当しないと判断されます。また、台所・浴室を新設したことによる建物価値の向上、または、その耐久性の増大をもたらすものと認められるため、資本的支出に該当します。
修繕費と資本的支出の違いによる税金への影響
資本的支出として資産計上し減価償却費を行えば、複数回による経費計上になりますが、原状回復費用として修繕費計上すれば単年度での経費処理が可能です。下記の場合、修繕費または資本的支出で処理して計上するかで課税所得がいくら異なるかを考えてみましょう。
2階建て木造アパートの外壁の塗装が劣化。剥がれなどが目立つため、維持管理として再塗装する場合、以前と同等の塗料による塗装工事を220万円で実施した。 |
修繕費で処理する場合
塗装費用220万円を修繕費とする場合、全額の220万円は経費として年度内での一括処理が可能です。
資本的支出で処理する場合
費用の全額が資本的支出に該当すると判断した場合、工事費用の220万円は固定資産として計上し、その後一定期間に渡って減価償却費として処理します。外壁塗装費用を減価償却する場合、塗料には法的耐用年数がないため、塗装を実施した建物の法定耐用年数を使用しなければなりません。本件のアパートは木造であるため、法定耐用年数は22年になります。つまり220万円÷22年=10万円/年の減価償却費の計上となるわけです。※塗料の耐用年数で割るケースもあります。
修繕費として計上すれば一括で220万円を経費処理できますが、資本的支出で減価償却すれば1年に10万円しか経費処理できません。仮に、上記アパートでの利益が300万円だったとすると、所得(収入−費用)は単純計算で修繕費なら80万円、資本的支出なら290万円に押し下げられます。節税面から見れば修繕費のほうが一時的な節税効果が高く有利となります。
詳しくは国税庁が公開しています。外壁塗装をする建物がどれに該当するかを確認してみましょう。
まとめ
修繕費のメリットが出ているように感じる方もいらっしゃるかと思います。資本的支出(減価償却費)として利用することも必要かもしれません。1年間で必要に迫られて行った工事、予防策として行った工事などいろいろとあったと思います。そのような実際に行った工事について、領収書を集めておくことも大切です。
しかし、確定申告書に記載されている建物の償却資産の残高は把握されているでしょうか?減価償却費は必ず毎年確認をするようにして下さい。毎年、確定申告時に償却資産を引かれていると思います。5年・10年・15年と経過した時に、「所得税が高くなった」と感じた方もいらっしゃると思いますが、それは償却資産がなくなってきているからです。また、建物自体の償却期間終わった場合も同様です。毎年、経費計上できる工事があればよいですが、そう簡単にはいきません。経費と資本的支出、耐用年数等の判断は難しいと思います。
事実として、税理士の方でないと判断できないと思いますので、ご不安な方は税理士さんへご相談されることを強くオススメいたします。
確定申告で前年度の1年間を振り返るだけでなく、次年度どのように経営していくか?計画的な修繕を行っていくか?を考えてみてはいかがでしょうか?
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この記事の執筆者紹介
ミノラス不動産
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