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任意後見や遺言に実効性を持たせる「見守り契約」とは
司法書士ゆかり事務所 司法書士 荻島一将
ご自身に判断能力が亡くなった後の財産管理を契約で決めておく任意後見制度や、亡くなった後の財産処分を定める遺言など、公正証書で作成しておくことは非常に重要です。しかし、これらの生前対策をしっかり行っていても、内容を実現できなくては元も子もなくなってしまいます。
今回は、生前対策をしっかり実現するために有効となる「見守り契約」についてご紹介します。
任意後見契約だけでは十分ではないと考えられる理由
ご自身が認知症等になって意思表示が難しくなったことを考え、任意後見契約を締結しておくことは、オーナー様にとって非常に重要な生前対策です。
ところで、任意後見契約を締結後、しばらくたって、ご自身が認知症等に罹患して、判断能力が低下したとします。その際には当然、任意後見契約を発効させる必要がありますので、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立を行うことになります。しかし、その時点で、ご家族や親類縁者の方が、ご本人の近くにいなかった場合、ご本人の認知症発症や判断能力の低下に気付いてくれる人がいらっしゃらず、せっかく締結した任意後見契約が発効しないという事態が考えられます。
このように、任意後見契約のみを締結しても、それが無意味になってしまうのは非常に残念なことです。
死亡後の財産の処分方法を決めておく、公正証書遺言を作成した場合にも、同様のことがいえます。
見守り契約とは
そこで、遺言や任意後見契約とともに、見守り契約の検討が必要となります。
見守り契約というのは、定期的に電話や訪問によって、ご本人にコンタクトを取り、ご本人の心身の健康や生活状況などを把握することで、ご本人を「見守る」契約です。
契約内容はご本人のライフスタイルや健康状態等により、最適な方法を決めることができます。例えば、心身の健康に問題がない場合は、月に1回の電話と2か月に1回の訪問、とすることもできますし、それでは少し不安という場合は、もう少し電話や訪問の回数を増やしてもいいかもしれません。
既に介護が必要となっている場合は、地域包括センターやケアマネージャーと連携することで、より幅広いケアや心配事への対応が可能になります。
見守り契約が発効中に、必要であれば、判断能力低下前に、財産管理契約を締結することも検討できますし、任意後見契約を見直したりすることも検討できますから、本人にとっても安心です。
見守り契約ではできないこと
このように、遺言や任意後見契約とセットで締結しておくと非常に有効な見守り契約ですが、その目的はあくまで、その契約者ご本人の健康状態や生活状況を「見守ること」ですので、その契約に含まれないこともあります。例えば、見守り訪問の際に、買い物や部屋の掃除などの日常事務を頼むことは基本的にはできません。また、銀行でお金をおろしてくる、などということも「見守り契約」だけでは権限の範囲外です。お金の管理をお願いしたい場合は、別途、財産管理契約を締結して、任せることが必要です。
遺言や任意後見契約等の生前対策をご検討の際は、ご自身のニーズや状況に合わせて、必要な契約を組み合わせて検討することが非常に大切です。この場合も是非、専門家に相談しながら、最適な契約を検討するようにしましょう。
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この記事の執筆者紹介
ミノラス不動産
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