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2021.11.29

贈与税、相続税の今後

▶前回のコラムはコチラ「親から子への贈与
贈与税 2つの課税制度

これまでのコラムでも贈与について解説しました。今回は、贈与税に関する今後について詳しく触れていきます。

令和2年12月10日に発表された令和3年度税制改正大綱において下記のような記載がありました。

●令和3年度税制改正大綱(抜粋)

・資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討

高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。

高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待できる。このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。

わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。

  ~中略~

相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。

この記載の大きな目的としては、下記の2つだと考えられます。
高齢者の持っている財産(特に金融資産)を次世代に移転することによる経済の活性化
資産の再分配を機能させるため富裕層に有利な規定とならないような見直し

つまり、富裕層にとって有利な暦年課税制度に関して所得や財産額などによる制限や廃止も含めて改正を行い、相続時精算課税の利用を促進するような税制にすることで2つの目的を達成しようとしているのではと考えられます。

現時点では検討段階のため、これ以上の情報はありませんが、令和3年12月に控える令和4年度税制改正に情報が出てくる可能性が高いと言えます。

改正後の生前贈与対策

まず生前贈与としての対策を考えてみましょう。

暦年贈与の最終年、または最終年の前年の贈与
いわゆる駆け込みでの贈与になりますが、税制改正の内容によっては多めの贈与によるメリットが考えられます。どの程度が最適であるかは、税制改正大綱などの情報が出た後に、専門家へご相談いただくとよいかと思います。

不動産の購入
特に子や孫が居住用不動産を購入する際などに建物部分を親名義で購入する方法も考えられます。不動産、特に建物は相続評価が現預金と比べて低くなりますので現預金で持つよりも効果があります。

住宅資金贈与などの優遇制度の活用
非課税枠として優遇制度が残るようであれば、今までと同様に利用することをお薦めいたします。

なお、税制改正があった場合には新年度から適用されることが多いため、仮に令和4年度から税制改正となった場合は、新年度から令和4年3月31日までの贈与が一つの目安となります。さすがに令和4年3月31日までとなると時間の余裕がないかもしれませんが、今から贈与を検討すること自体はご自身の財産、歴史ある財産を守るためにも得策と言えるかもしれません。

改正後の相続税対策

次に、今後の相続税対策としての対策を考えてみましょう。

養子縁組
孫との養子縁組は基礎控除分が多くなることに加え、相続人ごとに掛ける相続税率を下げる可能性が高いので有益です。ただし、遺留分など税金以外の部分で留意することも多いですので、相続人間で比較的円満な関係が築けている場合にお薦めいたします。

法人の活用
収益物件を新しく作った法人へ移管させるのも有効な対策と考えます。直接個人所有するよりも、法人を通して所有するほうが相続の評価が安くなるケースがあり、また贈与時点での評価額を相続税の計算の際に使うことが継続されるのであればとても有効な手段であると考えらえます。

これまで、相続税対策としてわかりやすく有効であった暦年課税が強化または廃止される場合、その他のいろいろな相続税対策を検討し、ご自身に最もメリットがあるものを選択する必要があります。早めに専門家へ相談し、贈与を検討されてみてはいかがでしょうか。

本コラムでも税制改正についても触れていきますので、今後の動向についてチェックいただければと思います。

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