お役立ち情報
大切な資産を「守る」「つなぐ」「増やす」ために
役立つ不動産の市況や経営の情報をご紹介
このコラムでは、借地権にまつわる底地・借地のトラブルに関する判例をご紹介します。底地は収益性が低く、相続時の評価が高いため、将来的に相続の際に大きな負担となる可能性があります。次世代へ問題を先送りにせず、底地借地関係の解消を検討されることをおすすめします。

経緯
富山県宇奈月温泉で、借地人Bさんは温泉水を引くため、地主Aさんに許可なく土地に引水管を敷設していた。地主Aさんが、この引水管の撤去を求める妨害排除請求を行った結果、トラブルとなり、裁判で争うこととなった。
地主(Aさん)の主張
- 引水管は、無許可で自己所有地を無断で占用しており、所有権に基づき撤去を請求するのは当然である。
- 借地契約に引水管の設置や使用継続を認める条項は存在していない。
借地人(Bさん)の主張
- この引水管は温泉営業のために長年使用しており、地域の共同利益にも資する。
- 地主Aさんの請求は嫌がらせ的であり、社会通念上許されない。
- 撤去すれば温泉営業に甚大な損害が出る。
- 引水管が土地を通過している事実について、地主Aさんは長期間にわたり知りながらも何ら抗議や是正を求めることなく黙認していた。
裁判所の判断
裁判所は、以下の判断を下しました。
- 所有権は絶対ではあるが、その行使が社会通念上著しく不当な場合は「権利の濫用」に該当する。
- 本件では引水管が地域の温泉利用に不可欠で、撤去は公共的利益を著しく害する
地主Aさんの請求は権利濫用として認められない。
【大審院 昭和10年10月5日)判決】
今回の事例は温泉施設と少し特殊な内容ではありますが、この事件は、日本の民法において「権利の濫用」概念を明確に示した代表的判例です。地主の所有権行使であっても、社会的相当性を欠く場合には制限されることを示しました。
底地や借地の権利行使では、契約内容だけでなく、地域性・公共性・信義則も考慮されます。所有権を根拠に強行な請求をする場合などは、社会的評価や相手の生活・営業への影響も慎重に検討すべきです。
▶お問い合わせはこちらから
▶メルマガ会員募集中!賃貸経営に役立つ情報を定期的にお届けいたします!!会員登録はこちらから
おすすめ勉強会
この記事の執筆者紹介

ミノラス不動産
私たちは次世代へ大切な資産を「守る」×「つなぐ」×「増やす」ために、お客様の不動産継承計画を共に実現させる不動産サポート企業です。