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2022.07.07

路線価評価が否認される!?②~解説と影響~

ミノラスホープ株式会社 税理士 岡田 祐介

 前回「路線価評価が否認される!?①~当該事案概要~」では、路線価の評価が否認された令和4年4月19日の最高裁判決の概要についてお伝えしました。今回は、その判決に至ったであろうポイントと今後の不動産を使った相続対策への影響について、最高裁判決の抜粋から解説していきます。

最高裁判決 抜粋1


相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。


 上記には公平や平等といった文言が使われています。相続税法を含め税法には一般原則というものがあり、そのなかで平等原則(租税法では租税公平主義とも)というものがあります。画一的な方法(路線価評価)をすべての納税者が採用することで、算定方法による公平さを保てるため、たとえ鑑定評価額などの時価と乖離があっても平等原則に違反しないとされています。

 そうなると、今回の納税者もこれに従っているため、問題がないように思えます。ところが、原則には例外がつきものです。その例外として、上記判決の下線部分にある「租税負担の公平に反するというべき事情がある場合」には路線価評価でなく鑑定評価額などの時価で評価をすることは平等原則に違反をしないという判決になっています。 では、その「事情」とは何でしょうか。もうひとつの判決抜粋から解説していきます。

最高裁判決 抜粋2


これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない

もっとも、本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人ら(※相続人ら)の相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。

そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる

そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。 したがって、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するということはできない。


 最初の下線部分は、通達評価額(路線価)と鑑定評価額との間に大きな乖離があったとしても、それだけでは例外を認める「事情」にはならないとされています。しかし、それを受けての2つ目と3つ目の下線部分では、相続税の負担を著しく軽減させることと負担軽減をも意図して不動産の購入と借入を行ったことに触れており、これがその「事情」となりえた部分であると考えられます。

 前回記載したように、この事案では、課税価格として5億円以上の圧縮を行い、納税額を0円にしたことが税負担を著しく軽減されました。さらに、金銭の貸主である信託銀行の稟議に相続対策のためという記載があったこと、相続の直後に売却していることなどから、負担軽減の意図があったと判断されたのでしょう。

今後への影響

では、不動産を使った相続対策はできなくなってしまうのでしょうか。私個人の考えとしては「限られた状況下においてのみできなくなっただけ」と考えています。

抜粋②にもあるように、路線価評価と不動産鑑定評価に大きな乖離があっても、それだけでは今回の事案のように鑑定評価による方法が認められる事情にはならないとあります。つまり、重要なのは「不動産を購入する理由」にあると考えます。相続税の対策が主目的となっていなければ、「事情」に該当する可能性が低くなります。

例えば、現在お持ちの不動産のうち、次世代以降も持ち続けてほしいものを順位付けし、それを誰に渡すのかを決めます。その上で、全員の取得が平等に近くなるように資産の組み換えを行った結果、相続税額が抑制されたのであればどうでしょうか。意図しているのは円満な相続であり、その結果の相続税の対策という立ち位置になるかと思います。

 抜粋2の下線部分にもあるように租税負担の軽減をも意図して行っていることではありますが、重要なのは「著しい」軽減を意図していたかどうかであると考えますので、今回のような税額が0円となるようなものでなければよいのではと思います。

 このように考えていくと、今回のような90歳を超えてから対策するのではなく、若いうちから残したい財産を選定し、次世代へ残していく方法を考え始めることが第一歩になるのではないでしょうか。

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